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東京大学公共政策大学院 | GraSPP / Graduate School of Public Policy | The university of Tokyo

学生レポート

学生レポート

韓国でもらったもの

加藤 大祐

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◆閉塞感を飛び出して
「今までのところから1年間でも外に出て、だけどそこで力をつけてまた別のところに戻る、それこそが人生だ(濱田総長)」
国家公務員試験や厳しい就活事情、忸怩たる想いを抱えながらも、韓国に行きたい。格差と猥雑、エネルギーと優しさに満ちた国、韓国に飛び出した。
まず目にしたのは大統領選挙。ここは民主主義を人々の行動によって勝ち取った国。韓国ではお年寄りから若い学生まで政治への参加意識が強い。街では様々なプラカードを掲げ、贔屓の大統領への支持を訴える人々の集団に出会った。
「3月1日前後には日本語を話すな。」バス停で壮年の男性から注意され、韓国人の友人がすかさず応戦する。日韓関係は緊迫の度合いを高めていたが、僕と韓国の友人達はその友情を深めていった。
友人と訪れた済州島では街に乱立する怪しいお店の数々を目にし、韓国の地方都市間格差を感じると共に、日本ではみたことがなかった程美しい海に出会えた。

◆ロジックが全てではない。
海外に出れば、日本の常識が世界の常識ではないことが分かる。通じないのは、細かなロジック。ロジックを詰めれば相手が動くかと言えばそうではない。
中国の学生はむしろ大局観を重視する。ロジックは多少飛んでいい。韓国の学生もそれに近い。細かいロジックより新しい構想や問題の軽重を説いた方が伝わりやすい。
例えば従軍慰安婦問題。たしかに、狭義の強制性の議論は証言のレベルでみると、日本兵が強制連行したということは、韓国では一般的な状況ではなかったように思われる。
しかし、「それがどうした?」というのが韓国側の言い分である。兵士の強制連行であろうと、民間業者の詐欺であろうと、元従軍慰安婦の女性が慰安所で体験されたことは重い。一度慰安所に行けば、自らの意思で帰ることも、慰安を拒むこともほとんどできなかった。
日本人は精緻なロジックを詰めることは得意だと思う。だからこそ、大局観を意識する必要がある。新しい発想を歓迎し自らも提案していく必要がある。そしてこれに、和の心が加われば日本人は国際的にもかなり強い。中国や米国の学生と大気汚染について政策提言を行った際、僕もメンバーの一人として上記を心がけた結果、優勝を勝ち取ることができた。大局観を持ち、新しい発想を活かせる日本人は、世界でリーダーシップをとることができるはずだ。

◆真っ直ぐな誠意
僕がソウル大学に留学した一年は、日中韓関係が何かと揉めた時期であった。しかし、だからこそ、海外で中国や韓国の学生と接している日本の学生にはできることがある。相手の懐に飛び込んで、相手の考えを聞き、こちらの意見を言うのだ。
閣僚が靖国神社に参拝した時、中国人の学生グループの昼食会の議論テーマが靖国神社と聞いたのでそれに参加した。周りは中国人の学生と韓国人の学生で日本人は自分だけ。正直、最初は怖かった。しかし、日本の多くの人々が植民地支配をどう考え、靖国神社をどう考えるのかを説明した。たくさんの質問に答え、尖閣諸島や竹島の領有権についても中国や韓国の学生と議論した。
昼食会の後、仲良くなった中国人の友人に誘われてビリヤードをした。尖閣諸島についての中国の本音を教えてもらった。勇気をもって飛び込み、誠意をもって説明することは時に相手を動かせる。
国の立場は違えど、中国や韓国の学生は同じ北東アジアに生きる仲間で、一緒に飲んだり、議論したり、旅行したり、運動したりすることを通して友情を育んでいける。ソウル大学の留学の終わり、5人の中国人の友人を韓国の居酒屋に案内して飲みながら、このことを確信した。

◆師との出会い
ソウル大学への留学を通して最も感謝を捧げたい一人が、キャンパスアジアの韓国側の創設者であり、韓国の日本研究の第一人者であるパクチョリ教授だ。各国要人との交流を精力的に行いながらも、常に興味深い授業をされる教授は人間的にもカッコいいと思えた。そして、教授の授業を通して、リベラリズム、アジアの協調、そして行動することの大切さを学ぶきっかけを得た。

「行動しろ、リーダーになれ。」

ここで得た出会いや想いを糧に、これからも挑戦を続けていきたい。

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