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東京大学公共政策大学院 | GraSPP / Graduate School of Public Policy | The university of Tokyo

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大学院生活と留学

椛田かおり (from Japan) 2017年3月修了

GraSPPを卒業しもうすぐ2年が経つ今、このような機会を頂いたことを感謝致します。ここでは、I. 社会人経験を経た後での大学院進学の意味、II. 大学院が提供する国際的な機会を最大限に活用した経験をお話し、卒業生のリアルな声をお伝えすることができればと思います。卒業後希望通りの就職ができなかったらどうするのか? など様々な不安や周囲からの声があるかと思います。ですが、ご心配なさらずとお伝えしたいです。大学院を通じて様々なことを達成したと実感することができ、大切な人々との出会いがありました。

まず、I. 社会人経験を経た後での大学院進学の意味についてお話したいと思います。

1点目は、ありきたりではありますが社会人経験後では勉学に対する姿勢と学びたい内容が明確になっていたことです。私は法学部出身ですが大学受験の頃法学を使って何をしたいかなどがはっきりわかっていませんでした。それがわかっていて就職までその考えを貫く高校生は、実際には少ないと思います。数年でも仕事を経験した後でしたから、学ぶ機会の貴重さを身にしみて感じることができました。

2点目は、自分と向き合って本当に自分の興味があることは何なのか、自分が得意なことは何なのかを見直す時間ができたことです。自戒も含めて書きますが 働いていると、日々のことで精一杯で自分自身と向き合う時間はかなり限られてしまいます。更に予定も自分の思い通りにたてることはできません。大学院生活は、授業や課外活動で忙しいながらも、自分で優先順位をつけることによって自分にとって何が必要・不必要なのか見直すよい機会になると思います。

3点目は多様な人材に出会うことです。これからの世界を生きていくなかで、多様な価値観がぶつかりあう場面は不可避です。これまで自分がいかに一つのシステムに守られて、レールに乗って生きてきたのか、自分と違う人と出会うことでそれに気づくことができました。

これまで一つの型で考え、それを常識として相手も受け入れるのが当然と思っていたことが通用しません。そのような世界のなかで今後我々は活躍しないといけない、自分の価値とは何か、どのようにその価値を集団で発揮することができるのかを否応なく考えさせられることになります。例えばベネズエラからの留学生は、一人だけ。奨学金を貰って勉強させてもらっているので母国に帰って学んだことを母国に活かす責任があると必死に授業にくらいついていました。他の友人は、母国から単身アメリカに旅立ち、ファーストフード店での仕事やお掃除のお姉さんとして仕事を続け、お金をためて大学に合格、奨学金をとって大学院に進学した、いわゆるアメリカンドリームを体現しています。彼らのバイタリティには到底適わないと考えず、自分も頑張らねばと刺激をうけたものです。

自分と似た価値観の集団のなかで過ごすことは確かに楽です。わざわざ苦労して自分のコンフォート・ゾーンから出なくてもよいのではという意見も理解できます。人それぞれですので、そのような意見も受け入れることが大事だと思います。ただし、グローバル化が進むなか、そのような価値観を固持することは難しいのが現状だと考えます。勿論大学院は、魔法の箱ではないので卒業後突然スーパーマン・ウーマンになれるわけではありません。大学院の提供する機会をどのように活用するかは、自分次第です。

次に大学院が提供する国際的な機会についてですが、GraSPP 生のなかでもかなり活用した方だと自負しております。私はダブルディグリー制度の利用し、さらにアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議に合わせて開催されるAPEC Voices of the Futureに日本代表チームの一員として参加する機会を頂きました。

まず、ダブルディグリー制度ですが二つの大学院に通うことができたことはとても良い経験でした。卒業後両方の卒業生ネットワークへのアクセスができますし、二つの学校の授業や課外活動を経験することは双方を比べながらそれぞれの美味しいところ取りができる、というとても恵まれた制度です。APECの学生派遣については、私は東大から参加する日本代表チームの取りまとめの役割を果たしました。わずか数日間のプログラムでも、すべての予定をこなし、さらに協力してスピーチをまとめるのは想定通りにいかないことばかりで苦労しましたが、ラーニングカーブの大きな、貴重な成長機会でした。

卒業後の進路について、私は大学院進学を決めた時点から海外就職を希望していたのですが、幸運なことに米国での就職を実現できました。勿論大学生の頃から明確な目標があって、それに適した能力とチャンスがすぐにめぐってくる方もいらっしゃると思います。私の場合は、周囲の人に助けられながら、巡ってきたチャンスを拾い、最終的に自分が向いていて好きな仕事と環境に少しずつ近づいていくことができたと考えています。大学院進学は、キャリアの空白、人生の寄り道と捉えることもできますが、人生100年時代、1~2年仕事から離れることはキャリアという面では失うものは大してなく、むしろプラスであると考えます。卒業後、目に見えてすぐにお給料が上がるとか、昇進することはないかもしれません。ですが、教授や学生といった人々との出会いと経験は人生の宝物です。長期的に、人生の一部として大学院に行く価値は無限大だと感じています。

この寄稿を通じて、卒業後の自分が在学当時の自分に対して胸を張れるかを考えさせられました。この寄稿が、大学院進学や留学を検討している一人でも多くの方々の参考になり、背中を押すことになればと思います。