APEC Voices of the Future 2022 参加レポート
公共政策大学院 国際公共政策コース
1 年 堀 佳織
2022 年 11 月 12~18 日の日程で、タイ・バンコクにて APEC Voices of the Future が開かれた。今年は、APEC メンバーの 21 国と地域(エコノミーと呼ぶ)から 14 エコノミーのユース代表たちが一堂に会し、ユース提言の策定、APEC CEO サミットの傍聴、政財界のリーダー達との交流等の機会が提供された。プログラムを通じて、APEC 地域の青年リーダー達との交流を通じ相互理解を深められるだけではなく、日常では獲得することのできない貴重な経験は新たな視点をもたらすだろう。
今年のテーマは「Open. Connect. Balance.」。各国からの課題発信スピーチ、若者視点の提言書策定と議論、タイの企業や大学への表敬訪問と意見交換、現地メディアによる取材など、毎日が充実して刺激的であった。また、グループディスカッションやバスのシーティング等、エコノミーを振り分けるきめ細かいアレンジのおかげで、毎日異なるエコノミーの代表団と交流する機会を得ることが出来た。例えば、インドネシアの代表団とバス配車が同じだった日に、空き時間に互いの国の遊びを通じて仲良くなることが出来た。(あっちむいてホイ、は日本のアニメを通じて遊び方をも知っているそうで、アニメは日本の財産であると改めて実感した良い機会になった)
私は、APEC VoF 期間中の様々な機会を通じて、日本の代表団として3つの課題を発信することにフォーカスした。食料安全保障と増産、ジェンダー平等と多様化、そして、デジタル技術導入による課題解決の加速と効率化である。少子高齢化の波は、農業従事人口の高齢化と減少を招いており、安全安心な食料を安定的に供給できる環境を整備する必要性が高まっている。また、労働人口も減っていく中で、女性も含めた多様な人材が等しく活躍できる環境を整備することが日に日に求められている。日々多様化、複雑化する社会課題の早期解決と、様々な分野での効率化・生産性向上を図るべくデジタル技術を積極的に活用することを提言した。
APEC の場は、政治外交的イシューとは切り離して経済分野におけるパートナーシップを議論する場であり、昨今の地政学的危機について言及するエコノミーは数多くなかった。だが私は、若者だからこそオープンな議論を可能にし、課題に対する見解を共有することで、未来の協力関係を築くきっかけになると信じていた。だから、私は敢えて食料危機にも言及し、食料問題は、人口爆発が起きる将来の問題ではなくて、今まさに、地域で協力して取り組むべき課題なのだと発信した。「勇気あるあなたのスピーチに感動した。政治に左右されない私たちユースだからこそ、声に出せると勇気づけられた」と他の代表団の一人から言われたときは、自分の信念が国境を越えて響いたことを実感でき大変嬉しかった。
私がフォーカスした3分野以外にも、ヘルスケア、教育機会均等、気候変動などの課題が各エコノミーから発信された。これらは日本も同じく直面している課題である。オープンな場で課題意識を共有し、自分たちユース世代に何ができるか、何をするべきか議論することで、持続的な成長のために解決していこうとする一体感を感じることが出来た。住む地域は違えども、同じ APEC 地域の将来を担うユース世代として、志を同じくする仲間との出会いは、非常に心強い。これからもそれぞれのエコノミーで、ユース世代のリーダー達が、自分のエコノミーと APEC地域、そして国際社会の持続的な発展のために活躍する中で、VoF で過ごした日々と仲間は心のよりどころとなるだろう。
APEC リーダーズウィーク最終日の APEC CEO フォーラムでは、アメリカやフィリピン等のメンバーエコノミーの政治リーダーに加え、ゲスト参加のフランスのマクロン大統領のスピーチを直に聞くことが出来た。感染症、エネルギー、食糧、気候変動等様々な問題が同時多発する未曾有の危機の中で、各エコノミーの自律的な取り組みに加えて、持続的な発展に向けて各エコノミーはもちろんのこと、官民様々なセクターが協力して前進していくことを多くのリーダー達が訴えていた。APEC VoF の場をきっかけとして形成された 20~30 代の若いリーダーたちの絆は、将来 APEC 地域の持続的な発展を共に実現していくための礎になったと確信している。最後になるが、コロナ禍における対面形式の国際会議実現は苦労も多かったのではないかと思う。ホスト国タイをはじめ運営に携わった全ての関係者、ユース代表、そして、日本の代表団の仲間たちに感謝を伝えたい。