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国際法基礎理論(国際法における企業・NGOと民際的視点)

担当教員

大沼 保昭 中川 淳司

科目番号

11150

学期

曜日・時限

金曜3限

単位

内容・進め方・主要文献等

 グローバリゼーションの進行が「国家間法としての国際法」という枠組みに与えるインパクトを理論と実証の両面から検討することを課題とする。「国家間法としての国際法」において私人の地位と役割をどう位置づけるかは、19世紀以来の法実証主義国際法学における難問の1つであった。それは、私人の国際法主体性として議論されてきただけでなく、外交的保護権における個人請求の国家請求への埋没、国際人権条約の直接適用可能性など、さまざまな文脈でも議論されてきた。第二次大戦後は、企業活動の国際的展開に伴う国際法上の問題を理論的にどのようにとらえるかが重要な論点となってきた。しかし、今日のグローバリゼーションの進行は、従来の理論的枠組み――特に「国際法主体性」論――では十分にとらえきれない関係を生み出しているように思われる。
 この授業では、まず、国際法における私人の地位と役割をめぐる従来からの理論的取り組みを検討する。次いで、現代の国際社会において国際法の実現過程において私人が実際に果たしている役割を実証的に検討する。具体的なトピックとしては、WTO紛争解決手続における企業・NGOの役割、国家と外国投資家との間の投資紛争の仲裁による解決、国連グローバル・コンパクト、バーゼル合意・新バーゼル合意の定立・実施過程における民間銀行の役割などを取り上げる。こうした検討を通して、新たな理論枠組み(たとえば、「民際的視点」と、「国際法主体」でなく「国際法関与者」という大沼の主張や、「国際法参加者」というヒギンズの主張など)の現実適合性を探る。
 理論的取り組みの検討については主要文献を配布し、輪読する。実証的検討については、参加者にトピックを割り当てて調査・分析してもらい、分析結果を授業で報告してもらう。いずれの場合も、授業の最初の20分程度を担当者の報告に、残りの時間をオープン・ディスカッションに充てる。
大学院法学政治学研究科総合法政専攻、法曹養成専攻との合併ゼミとして実施する。ゼミの準備、予習、当日の討議、復習のあらゆる面できわめて負担が重いゼミなので、参加希望者は、そのことを十分承知した上で参加して下さい。

教材等

P.C.Jessup, Transnational Law,1956, G.C.Shaffer, Defending Interests: Public-Private Partnerships in WTO Litigation, 2003. 大沼『人権、国家、文明』(1998年)第1章、大沼『国際法』(2005年刊行予定)第3章、R.Higgins, Problems and Process, 1994, ch 3、その他、適宜配布する。

成績評価の方法

平常点とレポートによる。

関連項目