院長メッセージ

冬学期を迎えるに当たって

2004年10月

森田朗院長 東京大学公共政策大学院 院長 森田朗

東京大学の公共政策大学院は、4月に発足して半年が経過し、10月から後期の授業も始まりました。また、9月末から10月の初めにかけて、2005年度の入学試験を実施し、来年4月からの新たな入学者も決定しました。

まだまだ施設面等に課題はありますが、熱心な学生諸君と教員の努力により、高度の政策能力をもった専門家を育成する専門職大学院として、次第に充実してきました。

これまでの半年は新設の大学院の基盤整備の時期であるとすると、ようやく社会的にも認知されてきたこれからは、さらなる発展をめざす時期であると思っています。

これからの発展の方向としては、第1に、学生諸君の勉学への意欲に応えるべく、教育内容のさらなる充実を図ることです。これまでも実務を重視した教育を心がけてきましたが、まだ政策実例に関する教材や資料も不充分ですし、学生諸君のインターンシップや現場での学習を望む声にも強いものがあります。

公共政策大学院のめざすところを理解して、行政機関や企業のなかには協力を申し出て下さるところもありますし、これからは、そうした実務家の協力を得て、カリキュラムの充実・改善を図っていきたいと思っています。

また、政策決定の中枢におられる、あるいはおられた方をお招きしてお話を伺い、学生と討論を行う「公共政策セミナー」を、東京大学21世紀COEプログラム「先進国における《政策システム》の創出」および法学政治学研究科寄付講座「政治とマスメディア」(朝日新聞社)」との共催で10月から始めました。第1回を5日に開催し、民主党の岡田克也代表のお話を伺いました。

第2に、内外の同種の大学や機関との交流を促進し、世界的に高い評価を受ける政策の専門家の養成機関をめざすことです。アメリカのハーバード大学、コロンビア大学や、フランスのENA等の、世界的に著名な高等教育機関との提携をめざした交流も始まろうとしておりますし、アジア諸国の幹部公務員養成機関からの来訪や交流の申し出も受けました。

また、国内の行政機関やシンクタンクとの交流も、実務に関する経験を共有し、政策に関する先端的知識を創造する上でも有意義であり、推進したいと思っております。

公共政策大学院の初めての修了生を社会に送り出すのは、再来年の4月です。私たち教員も、その実力が高い評価を受けるような人材の育成に邁進するつもりですが、学生諸君も、これからの時代に、どのような職業に就こうともその専門家としての能力が認められるように、しっかりと学習してもらいたいと思っています。

わが国では、専門職業人を養成する大学院教育に対する理解はまだ充分とはいえません。しかし、社会構造の変化や国際化によって、大きくわが国のあり方が変わろうとしているときに、優れた人材こそ最も重要な資源であり、その育成をすることがいかに必要であるか、次第に理解が進み、社会の制度もそれに応じて改革されていくものと確信しています。

関連項目

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