院長メッセージ

さらなる発展をめざして

2005年10月

森田朗院長 東京大学公共政策大学院 院長 森田朗

2004年4月にスタートした東京大学の公共政策大学院も、2年目の折り返し点を過ぎ、先日実施された入学試験で3回目の入学生も決定しました。

来年3月に初めての修了生を社会に送り出しますが、本年4月からの夏学期は、2年生の諸君にとっては就職活動の期間でした。私たち教職員にとっても初めての経験であり、充分な支援をすることができなかったかもしれませんが、国の各省、国際関係機関、マスコミ、シンクタンク、金融機関等へ多数の諸君の就職が内定しました。来年度へ向けて、先輩の経験も活かし、より充実した就職支援の体制を作っていきたいと考えています。

2年目を終了し初めての修了生を出すことによって、当大学院の最初のサイクルは完成します。この間、学生諸君の勉学への熱意と協力、また学内外からのご支援、そして教職員の努力によって、当大学院も社会的にかなり認知されるとともに、今後のあり方についての期待と要望も聞かれるようになりました。こうした期待を裏切ることなく、また要望に応えるべく、今後も努力を続けていきたいと思っております。

現在、さらなる発展をめざして、次のような事項に取り組んでおります。

第1は、研究活動の展開です。当大学院でめざしている実践的な教育には、実務の最先端で開発された知識を教え、そこで働く方の指導を受け、学生自身その現場を知ることが重要です。それには、つねに政策の各分野における研究に触れ、あるいはそれを自ら試みることが必要です。

そこで、当大学院では、航空振興財団の委託研究を受託し、10月1日より国際交通政策についての研究を実施する「国際交通政策研究ユニット」を立ち上げました。この分野の先端的研究を、トップクラスの研究者を集めて実施するとともに、学生の参加によって教育面での充実も図っていきたいと思っております。

さらに、いくつかの寄付講座の創設の準備も進めており、多くの政策分野でこのような研究フォーラムを設けたいと考えております。こうした研究活動は、研究教育の内容面におけるメリットはもとより、限られた人的、財政的資源を獲得する上でも大きなメリットがあります。

第2は、国際連携の強化です。当初の予定より遅れましたが、米国コロンビア大学の国際公共政策大学院(SIPA)との学生交換を中心とする協定をまもなく締結し、来年度から交換留学生の派遣と受入を行う予定です。その他、ホームページの「国際交流」に掲げたように、多数の海外の多数の公共政策大学院関係者の訪問を受け、またこちらからも訪問し、提携や交流についての話し合いを行いました。これらを踏まえて、これからも国際交流の拡充を図っていく所存です。

第3は、カリキュラムの見直しです。当大学院の設置後2年間は、設置計画に示したカリキュラムに従って授業を行わなくてはなりませんでしたが、その間、前提条件の変化や、教員と学生からの意見、さらには社会からの要望も多数寄せられ、現在、それらの意見を踏まえてカリキュラムと教育体制の見直しを行っております。その中には、必修科目と事例研究のあり方の見直し、社会から要望の多い職業人向けのミッドキャリア・コースの創設、外国語授業の増設、1年終了コースの創設等があります。長期的な課題もありますが、現在進めている検討の結果を、可能なかぎり来年度からのカリキュラムに反映させていきたいと考えています。

その他、昨年秋から続けております「公共政策セミナー」もますます充実させ、今後も、各界の第1人者を続々と講師としてお招きする予定です。

また、今年の5月に、主施設を第2本部棟6階に移しました。授業が行われる教室からの距離が遠い等の不満の声も聞かれますが、現在の東京大学本郷キャンパスの施設の状況を鑑みると、自前の建物をもつことは当面困難です。しかし、第2本部棟の自習室等は充分なスペースがあり、さらにコンピュータ等の設備を充実させる予定です。学生諸君には、是非活用してもらいたいと思います。

以上のように、当大学院は、着実に発展をしております。施設面等で学生諸君の期待に応えられない点もありますが、私たち教職員は、諸君の熱心な勉学の意欲に応えるべく、全力を尽くしております。学生諸君の中から、自発的な研究集団が生まれ、修了後の同窓会設立の提案もされていることは大いに歓迎するところです。今後、この公共政策大学院が、世界の各界に人材を送り出す、すばらしい大学院となることを確信しています。

関連項目

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