留学生だより

大庭大(UCSD/IRPS)

私は2008年9月から2009年6月までカリフォルニア大学サンディエゴ校のSchool of International Relations and Pacific Studies (IRPS)に留学していました。IRPSは政策研究系大学院の先駆的存在で、環太平洋地域に特化しているのが特徴です。英語を母国語としない学生が半分くらいを占めている上に全員がアジアあるいはラテンアメリカの言語をひとつ習得することが求められており、留学生にとっても学びやすい環境だったと思います。学生のバックグラウンドも多様で、半分以上の学生が一度社会に出てから入学しています。日本からも官庁から来ている方が何人かいました。

サンディエゴは地理的にもメキシコとの国境近くであり、ラテンアメリカ系の存在感の大きい土地柄です。温暖なビーチがあるリゾート地として有名ですが、案外気温が下がります。私は見事に短パン・Tシャツばかり持っていって後悔することになりました。

東大の公共政策大学院と大きく異なると感じたことのひとつに、個々の授業が相互に関連するようにカリキュラムが体系化されていることがあります。IRPSの学生は1年目にかなりの量の全員共通の基礎科目を取らなければならないのですが、それらの科目は内容や扱う内容の順序が相互に関連するようになっており、ひとつの概念や事例を多角的に理解できるようになっていました。そしてその全員共通の知識・能力を前提として上級科目でその発展・応用を学ぶことになります。友人たちは必修科目などの制約の無い交換留学生の身分を羨んでいましたが、なかなか面白いシステムであるように思います。

またIRPSは東大に比べて実務的有用性により重きを置いていると感じました。授業では理論的な内容はあまり多くなく、世界を読み解くためのモデルとして汎用性の高いものだけを扱っているようでした。特に上級科目ではケーススタディが中心で、グループワークやプレゼンテーションなどの課題が多くありました。プレゼンテーションやテストを短時間でこなすことが求められ、紙で提出する宿題でも視覚的な理解のしやすさが評価の対象になるなど、まるで企業のようだと思うこともありました。ビジネスとプラグマティズムの国アメリカの面目躍如といったところでしょうか。

勉強もさることながら、大統領選挙の様子を現地で目撃できたのが幸運でした。日本でも今回の衆院選は盛り上がりましたが、アメリカの大統領選は本当に国を挙げてのお祭り騒ぎのようでした。

この留学は自分の将来を考える上でもよい機会となりました。入学時は日本で公務員になることを目指していたのですが、政策研究の知見を活かす場はもっといろいろあるのでもう少し可能性を模索してみようと思うようになりました。ために進路は今のところ未定ですが、この留学が有意義であったことは言を俟ちません。この機会を与えてくれ支援してくれた皆様にこの場を借りて謝意を表したいと思います。

留学生だより

2009年10月掲載

2009年8月掲載

2009年2月掲載