在学生用掲示板

2011-04-13

【授業】月曜3限「行政法の現代的諸問題」の履修者へ

宇賀克也先生からの連絡事項です。

 4月11日(月)の国立公文書館理事の山崎日出男氏のお話の中には、行政組織法上、大変重要な内容が含まれていました。 我が国では、主務大臣による分担管理制(行政法概説Ⅲ(第2版))105頁)がとられている中、公文書管理法では、 各府省の行政文書を廃棄するのに内閣総理大臣の同意を得なければならないとされていることです。 皆さんは内閣総理大臣というと大臣の任免権を持ち、閣議を主宰する内閣総理大臣をイメージし、 主務大臣の上にいるのだから当然ではないかと思われたかもしれません。 実は、内閣総理大臣には閣僚の任免権を有する内閣の首長としての顔(行政法概説Ⅲ(第2版)97頁)、 内閣官房等の内閣補助部局の長としての顔(行政法概説Ⅲ(第2版)113頁)、内閣府の長としての顔(行政法概説Ⅲ(第2版)113頁)の 3つの顔があります。内閣府は、各省より一段上で内閣補助事務を行う面と、各省と対等の立場で 分担管理事務を行う面の二重の性格があります(行政法概説Ⅲ(第2版)133頁)。 公文書管理については、内閣府公文書管理課が分担管理事務として所掌しており、各省と対等の立場ですから、 内閣府の長としての内閣総理大臣は、各省大臣と対等の立場になるわけです。 にもかかわらず、なぜ、内閣府の長としての内閣総理大臣の同意を義務づけられるのかという問題が生じます。 これが総括管理機関(行政法概説Ⅲ(第2版)72頁)の権限の問題で、 形式的には対等の立場にある大臣に対して、所管大臣が一定の権限を認められることがあります。 わかりやすい例が、財務大臣が対等の立場にある各省大臣に対して予算の査定権を有することです。
 4月18日は、人事院人材局企画課長の福田紀夫氏にお出で頂き、わが国で唯一、内閣の所轄の下に置かれた独自性を有する 行政委員会である人事院について説明していただきます。 人事院は、国家公務員試験の実施等の行政的機能、人事院規則の制定という準立法的機能、 公務員に対する不利益処分に係る不服申立ての審査という準司法的機能を行う重要な機関です。 また、最近の人事行政の施策と課題(多様な有為の人材の確保と育成、能力・実績に基づく人事管理の推進、 職員の勤務環境等の整備、高齢期の雇用問題)、公務員制度改革についてもお話いただく予定です。 事前に行政法概説Ⅲのテキストの第1編第1部第6章7(人事院)、第2編第1章7(人事行政機関)、 8(国家公務員法改正の経緯)について予習しておいてください。

宇賀克也

関連リンク