非連続なイノベーションとコーポレートガバナンス改革の新展開
11月1日(金) 15:00~17:20
東京大学本郷キャンパス 福武ラーニングシアター(福武ホール地下2階)
第四次産業革命の下では、競争のレイヤーが、同質のコスト競争から付加価値の獲得競争に大きくシフトしている。その荒波は予想以上に激しく、これを我が国が乗り切れるか否かは、現場感の裏打ちを得ながら、過去に見られた不作為の連鎖を断ち切り、果断な判断をすることができる強い経営者を選任することができるかに掛かっていると言えよう。
強い経営者の育成・選任改革、非連続なイノベーションを生み出し将来の成長を確保するために求められる取締役会の機能と機関設計の在り方、昨今のアクテビィスト提案に見られる新しい潮流と如何に向き合うか、こうした中で新たに期待される社外取締役の役割等について、今後の進むべき方向性を探る。
東京大学公共政策大学院(GraSPP) 武蔵野大学国際総合研究所(MIGA) (共催)
日本CFO協会 (協賛)
無料(要事前申込み。定員に達した場合受付を終了します)
日本語のみ
令和元年11月1日に福武ラーニングシアターにおいて、シンポジウム「非連続なイノベーションとコーポレートガバナンス改革の新展開」が行われました。本シンポジウムは、寄付研究プロジェクト「経済成長とリスクマネージメント」のコーポレートガバナンス研究会の研究成果の一環として行われたものです。 企業経営者・幹部、投資家、監査法人、企業法務研究者をはじめ200名を超える皆様のご参加をいただきました。
まず、武蔵野大学国際総合研究所長/東京大学公共政策大学院客員教授の林良造先生よる開会挨拶の後、㈱経営共創基盤(IGPI)代表取締役CEOの冨山和彦氏より、「Society5.0の時代に相応しい新たな会社のカタチ」というテーマで基調講演をいただきました。講演の中では、グローバリゼーションとデジタル革命の進展という「破壊的イノベーションの波の拡大」に日本だけでなく世界の大企業が必ずしも有効に対応できなかった平成の30年間を振り返りながら、これまでの改良型イノベーションの時代においては、企業の意思決定は従来のボトムアップ方式で足りたが、事業からの撤退や機能の入替え等の重要事項の迅速な決断を迫られる破壊的変化の中では、トップダウン方式で行わないと、適時適切な対応ができずに全滅してしまうとの警鐘を鳴らしました。そのためにも、会社における意思決定の在り方、意思決定する人の選任方法が重要であると明言されました。また、残る会社と残らない会社の差は、リーダーシップの在り方にあり、故に「いかにして“できるリーダー”を選ぶべきか」が鍵であり、このような考え方に沿って、従来の日本企業のプラクティスを変えていけば「会社のカタチ」も変わるはずであることが強調されました。
今後は、上位のアーキテクチャーをおさえられるような会社を目指すべきこと、また強い会社組織のためには常勤監査役の重要性を認識するべきことにも言及されました。
これに対し、会場からは、「非連続なイノベーションを克服できるリーダーの見い出し方とその人材の活かし方」について質問があり、「実はこれからが本当の勝負」としつつも、冨山氏の経験を踏まえた今後の計画を述べられていました。
後半は、「コーポレートガバナンス改革 -今後の課題と方向-」というテーマで、パネリスト:太田順司(株)東芝社外取締役、スコット・キャロンいちごアセットマネジメント(株)社長、武井一浩弁護士、中原裕彦経済産業省大臣官房審議官、藤田能孝(株)村田製作所常任顧問、モデレーター:藤田純孝日本CFO協会理事長にてパネルディスカッションが行われました。まず、平成26年以降のコーポレートガバナンス改革の全体の評価と課題を俯瞰した議論が行われ、その後、1)企業経営側の改革状況と課題、2)強い経営者の育成と取締役会/指名委員会の役割、3)機関投資家によるエンゲージメントの課題と新しいアクティビズムの潮流、4)グループガバナンスの強化についての4つのテーマに分けて、活発な議論が行われました。取締役会が、強く優れた経営執行陣を、トップを含め継続的に育成・評価・選任することが大切であること、コンプライアンス又はリスク対応等、監督けん制機能を効かせること、経営人材の流動性を進めること等の共通認識が得られ、本シンポジウムが締めくくられました。本シンポジウムは、企業経営関係者及び企業法務関係者が、今後のコーポレートガバナンス改革の更なる深化に取り組む上で、多くの示唆に富むものになったと考えております。