2025年度研究テーマ 「トランプ政権誕生と世界のエネルギー温暖化政策動向」 第6回 重要鉱物をめぐる現状と課題
開催概要
本研究会では、JOGMEC エネルギー・金属鉱物資源機構 金属企画部担当審議役 調査課課長 原田 武 氏を招き、「重要鉱物をめぐる現状と課題」をテーマに講演が行われました。冒頭、石油・天然ガスと並び、重要鉱物がクリーンエネルギー転換のみならず、経済安全保障・国家安全保障上のアキレス腱となりうること、特定国へのサプライチェーン集中が、石油・ガス以上に高いリスクをもたらす可能性があることが共有されました。
JOGMECの役割と国際的評価
JOGMECの前身である金属鉱業事業団時代から蓄積してきた地質・探鉱の知見を活かし、探査・開発段階へのリスクマネー供給、経済安全保障推進法に基づく助成制度、レアメタル備蓄などを組み合わせて官民の「すり合わせ」を行う日本独自の体制が紹介されました。こうした取り組みは、ドラギ・レポート(※1)等を通じて欧州でも高く評価されていると説明されました。
(※1)欧州中央銀行(ECB)元総裁でイタリア元首相のマリオ・ドラギ氏が監修し、2024年9月に欧州委員会から発表された「欧州の競争力の未来」という報告書の通称
重要鉱物需要の拡大と供給ギャップ
IEAの分析を用い、EVや再生可能エネルギーの普及に伴い、銅、リチウム、ニッケル、レアアースなどの需要が急速に拡大していることが示されました。一方で、鉱山開発は、リードタイムが長く、価格変動が大きいため投資判断が難しく、中長期的な供給ギャップが生じる懸念が指摘されました。リチウムについては、資源量自体は潤沢であるものの価格急落により新規投資が停滞していること、銅については、老朽鉱山への依存やコスト上昇、新規大型鉱床の不足が課題であることが説明されました。
中国の寡占とサプライチェーンの脆弱性
中国が精錬・中下流工程で高い世界シェアを持ち、輸出管理を強化していることが、レアアースを中心に供給途絶リスクを高めていると述べられました。一方、アンチモンの例に見るように、日本では原料調達先の多角化や国内加工能力の維持によって、一定のリスク緩和を図ってきた事例も紹介されました。
国際的なデューデリジェンス(※2)と「基準に基づく市場」
G7重要鉱物行動計画、OECDガイダンス、RMI(Responsible Minerals Initiative)の枠組みを踏まえながら、人権・環境・腐敗防止などの基準を適切に価格へ反映させる「基準に基づく市場」を構築する動きが紹介されました。一方で、RMIの枠組みにて、中国やインドネシアの中国資本の製錬所も基準を満たし得ることが認証されていることから、制度の運用には難しさがあることが今後の課題として指摘されました。
(※2)デュー・ディリジェンス(Due Diligence):原材料の由来に人権侵害などの問題や紛争への関与がないか確認し、問題が確認された場合は是正を行う継続的な活動。
原田 武 金属企画部担当審議役 調査課課長(JOGMEC)講演資料「重要鉱物をめぐる現状と課題」
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※本ページの概要は、原田 武 金属企画部担当審議役 調査課課長(JOGMEC)のご講演内容をもとに筆者が要約したものです。
(文責:東京大学リサーチ・アドミニストレーター 殿木久美子)