科学技術と公共政策

担当教員

鈴木 達治郎 鎗目 雅松浦 正浩

配当学期・曜日・時限

夏学期 火曜 2限

内容・進め方・主要文献等

 【1】 国際関係、安全保障、温暖化、TA (担当 鈴木)
先進科学技術が社会に与える影響を正/負両面から幅広く評価する活動をテクノロジー・アセスメント(Technology Assessment: TA)と呼ぶ。まず、TAの歴史と最新動向を紹介するとともに、日本においてTA活動が定着するための条件や可能性について、ナノテクノロジーなどの事例を通して考える。
科学技術と公共政策の関係を考える上で、重要な要素として考えられるのが、国際情勢との関係である。本科目では、科学技術の進歩が国際情勢に与える影響、逆に国際情勢の変化や動きが科学技術の進展にどういう影響を与えるか、について、いくつか事例をふまえて、考えることとする。具体的には、科学者/技術者コミュニティが国際政治や外交分野でどういう役割を果たしてきたか、民生用に開発された先端技術が軍事用に転用されないためにはどのような制度/政策が必要か、などの問題を取り扱う。事例候補としては、(1)温暖化問題とIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の役割(2)核軍縮問題と科学者の役割(3)原子力平和利用の拡大と核不拡散問題(4)軍民両用技術と安全保障貿易管理政策。

【2】 科学技術と知識の生産 (担当 鎗目)
近年、社会・経済活動において知識に基づく活動の重要性は飛躍的に高まっており、それは “Knowledge- Based Economy” という概念によって各国に共通する認識となっている。
科学技術に関する知識の内容は急激に高度化・専門化が進み、各学問分野の専門領域が細分化する一方、社会における様々な問題は複雑化・不透明化しつつあり、一つの組織が全体像を完全に把握することはもはや不可能となりつつある。したがって、イノベーションを創出していくにあたって、それぞれの組織が独立にクローズドな形で知識を生産することに加えて、行動主体が個別の境界を越えて知識の創出・伝達・活用を共同して行うことが必要になってきている。今後そうした連携を組織内外に効果的に形成し、科学技術に関する知識をユーザーのニーズと適切な形で組み合わせることによって、社会における新しい機能を生み出し有効に活用していくことが求められる。本講義では、技術変化に関するモデル、大学・企業における研究開発、イノベーション・システム、知的財産権、環境問題などに触れながら、科学技術と制度が共進化していくプロセスのメカニズムを議論し、将来へ向けた企業戦略、公共政策、制度設計を検討する。

【3】 社会的合意形成、リスク管理 (担当 松浦)
 多様な政策形成の場面において科学的・技術的知見が利用されているが、どのような知見を、どのような形で利用するのかなど、政策形成と科学技術の相互作用の態様は、結果として生成される公共政策の内容に大きな影響を与えうる。今回は社会的合意形成を目的とした科学的・技術的知見の活用方法として主に共同事実確認(Joint Fact-Finding)に着目し、国内外の事例を検討するほか、交渉シミュレーション教材を用いた体験学習も行なう。
 また、リスク評価とリスク管理に関する理論(予防原則、生命倫理問題等を含む)と政策手段(法規制とその運用、情報共有、保険等市場的制度、補償制度)などについても、ゲストスピーカー等からお話を伺う。

教材等

城山英明(編)『科学技術ガバナンス』東信堂、2007年
鈴木達治郎・城山英明・松本三和夫編『エネルギー技術の社会意思決定』日本評論社、2007年 ほか追って指示する。

成績評価の方法

平常点(25%)及びレポート等(25%×3回)による。

関連項目