留学生だより

篠原信州(to LKY)

2010年8月から12月まで Lee Kuan Yew School of Public Policy(LKYSPP)に交換留学していました。 シンガポールでの生活は、キャンパスの内外ともに充実したものになったので、 ここで少し紹介させていただきます。 LKYSPPへの留学を検討される方の参考になれば幸いです。

LKYSPPの特色

先輩方が既に「留学生だより」に書いていることと少し重複するかもしれませんが、 LKYSPPで学ぶメリットを3つ挙げたいと思います。

一つ目は、アジアに位置しているということです。 LKYSPPではアジアの政治・経済にフォーカスした授業が用意されているだけでなく、 学生もアジアを中心に様々な国から集まっており、 議論の中で各国の学生が母国のことを紹介してくれるので、 いろいろとおもしろい発見があります。

二つ目は、留学生の比率が高いことです。 中国とインドが多く、アフリカや南米は少ないという地域的な偏りはありますが、 地元の学生は1割ほどに過ぎません。 留学生のほとんどはキャンパスから徒歩10分ほどのところにあるCollege Greenという寮に住んでいたので、 日常生活の面でも文化交流/摩擦を経験することができます。

三つ目は、シンガポール政府の政策に触れられることです。 日本とシンガポールとでは前提条件が大きく異なるので、 シンガポールの政策をそのまま日本に導入するようなことは難しいですが、 弱小国家から世界トップレベルの一人当たりGDPを誇る都市国家にまで成長した過程は見ているだけで非常に興味深いです。 ちなみに、2010年はシンガポールが14.7%の経済成長を記録した年で、 キャンパス中心の生活を送っていてもその熱気を感じることができました

授業について

学部や他研究科と合併の授業はなく、 大学院らしく学生自身が講義やディスカッションをリードすることを求められる授業が多いです。 ほとんどの授業ではグループワークによる課題が必須で、 寮に戻って夜遅くまで共同作業することも何度かありました。

私が履修したのは、“International Politics and Diplomacy”、“Public Policy and Management in Singapore”、“Ethnic Politics in Southeast Asia”、“Great Powers in the Age of Globalization”の4つです。

International Politics and Diplomacyでは、 2010年11月の韓国でのG20を想定した模擬交渉に取り組みました。 各アクターが自身の利益の最大化を目指しつつ、 交渉決裂を避けるためにギリギリのタイミングで妥協して玉虫色の文書を作っていく過程を疑似体験することができました。

Public Policy and Management in Singaporeでは、シンガポールの政策について議論しました。 授業を担当した教授は長年シンガポール政府で要職を務めてきた人で、 自身の経験をユーモアを交えつつ紹介してくれました。 また、政策トピックごとにシンガポール政府の現役官僚による講義と質疑応答もありました。

Ethnic Politics in Southeast Asiaでは、 民族と政治に関する先行研究を概観した後、 多民族国家がどのように民族を取り巻く問題に対処しているか議論しました。 出身国が多様な学生たちと議論する中で、民族と政治の複雑さを垣間みることができました。 私自身も、日本の民族問題について聞かれることがあり、 今まであまり意識して来なかった在日コリアンについて考える貴重な機会になりました。

Great Powers in the Age of Globalizationでは、 グローバル化の進んだ現代世界において国際政治の古典的な理論が各国の外交政策に与える影響を議論しました。 毎週、膨大な量の文献を読んでくることが求められて苦労しましたが、 中国、台湾、パキスタン、南アフリカ、元アメリカ海軍の学生との議論は刺激的でした。

スポーツ

LKYSPPには学年とプログラムごとにサッカーチームがあり、 同じキャンパスの法学部、ロースクールの学生チームとのリーグを戦っています。 毎週のように芝生の中庭でサッカーをする機会があるので、 留学される方はGraSPPのサッカーサークル「マツオジャパン」で足慣らしをしていくことをお勧めします。 日本人は即戦力として期待されているみたいです。

サッカー以外のスポーツも気軽にできます。キャンパスのすぐ隣には、 50メートルプール、陸上トラック、テニスコートなどを備えたスポーツ複合施設があり、 LKYSPPの学生は無料ないし低価格で利用できます。 College Greenの中にも、テニスコート、バスケットコート、バトミントンコート、 卓球台があり、勉強の息抜きにはもってこいです。 近所にはボタニックガーデンや自然保護区があり、 暑い中でも日差しを避けてジョギングすることができます。 友人と一緒にジャングルのトレイルランニング・レースや高層ビルの駆け上がり競走に参加したのはいい思い出になりました。

その他

チャンギ空港にはローコストキャリアーがいくつも乗り入れており、 シンガポールは東南アジアの国々を訪問するにはもってこいの国です。 私は授業に追われて、旅行する時間を確保できませんでしたが、 東南アジアでフィールドワークをしたい方、あるいは単に観光したい方は、 この機会を活用することをお勧めします。

もちろん、シンガポール国内にも見所はあります。マーライオン、カジノ、 ショッピングモール、ナイトサファリなど。 私はそういうところにあまり興味がわかなかったので、 空いた時間は自然保護区を歩いたり、戦争の史跡、 記念碑巡りをしたりしていました。

留学生だより

2011年3月掲載

2010年1月掲載

2009年8月掲載

2007年4月掲載