第3回ITPU国際セミナーを開催しました

2007 年 7月 3日(火)に東京大学本郷キャンパス山上会館にて、公共政策大学院国際交通政策研究ユニット( ITPU )主催の国際セミナーを開催しました。

世界の主要空港では容量制約による遅延が利用者利便を阻害するとともに、航空会社間の競争を制約するという問題が顕在化しています。これまで、空港混雑をめぐる航空政策については行政当局と学識経験者によるさまざまな検討がなされてきましたが、必ずしも最適な制度設計が実施されているとはいえない状況にあります。研究者の間でも、発着枠の配分、着陸料に係る料金政策、空港に対する公的規制が個別に検討されることはあっても、全体が統合して検討されることはあまりありません。また、都市交通などの混雑問題が今日的課題となっていますが、これら航空以外の分野における検討も参考にする必要があります。そこで、内外の代表的な学識経験者、政策担当者、航空会社、空港当局等がこれらの問題に関する最新の取組みなどについて発表することを通じ、空港混雑の改善に向けた意見交換を行いました。

冒頭、森田朗公共政策大学院長による挨拶の後、セミナーの前半では、 Richard Arnott Boston College 教授及びYimin Zhang China Europe International Business School教授による学術面からの発表と、Brian Meehan 米国連邦航空局空港スロット課・調整担当コンサルタント、Laurie Priceモット・マクドナルドグループ・航空担当ディレクター及び佐藤善信国土交通省航空局監理部航空事業課長から実務面からそれぞれ米国、欧州、日本における現状と課題についての発表が行われました。後半は、以上の発表者に加え、安嶋新鞄本航空経営企画室部長、藤村修一全日本空輸滑驩謗コネットワーク戦略部長及び武藤康史潟Xターフライヤー常務取締役をパネリストとして、金本良嗣東京大学経済学研究科/公共政策大学院教授をモデレーターとするパネルディスカッションが行われました。

発表内容等を総括すると、混雑や環境負荷などに関する解決策としては、「市場ベース」(混雑プライシング、オークション、2次市場)、「割り当て」(公共部門による配分方式、国際線のIATA発着調整ルール[1]、ペリメータールール[2])、「技術ベース」(管制処理容量の拡大、騒音対策)といった異なるアプローチが考えられます。経済的な効率性という点では市場ベースの仕組みがすぐれているものの、航空会社からは負担増となることの問題や公正な競争の確保といった観点からの配慮が必要だとの指摘がありました。このほか、地方都市ルート確保の問題や空港民営化と混雑管理の関係など複雑な論点について活発な意見交換がなされました。

[1]先行者利益の保護(Grandfathering)、権利不行使による失効(Use-it-or-lose-it)など。

[2]大都市近郊に複数の空港がある場合、都心に近い空港の運航先を同空港から一定の距離の範囲内とするルール。米国のニューヨーク・ラガーディア空港などで実施。

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