留学生だより

丸川正吾 (LKY-SPP)

「留学にトライしてみよう!」ということになると、もちろんいろいろと準備をしなければなりませんが、これだけはやっておいたほうが良いだろうということがあります。それは「日本について良く知っておく」です。留学というと語学の面ばかりが強調されがちですが(あながち間違いだとはいえませんが)、語学にある程度自信があったとしても何を言っているか判らないものは判らないのです。特に最初の頃は授業の形式に慣れるのだけでも相当大変だと思います。しかし、生活をするうちに、どうにかこうにか環境に適合しようとするうちに、言葉の問題が占めるウェイトは小さくなってきます。

その一方で次第に日本人として何を皆に提供できるかが大事になってきます。リー・クァンユー公共政策大学院には東南アジア各国の公務員がひしめいており、日本の政策に対する関心度は、(中国インドのそれに押されつつあるものの)、なお高いと言えるでしょう。興味関心のある政策分野はもちろんのこと、もう少し広いところまである程度知っておくと、議論のときにその場に居る意味を発揮しやすいと思います。流暢にしゃべれればそれに越したことはありませんが、そうでなくても聞かれたことに対して真摯に答えようとする姿勢をまず身につけることが大事でしょう。

留学しようと思うと何もかも完璧でなければならないと思うかもしれませんが、そんなことはありません。私もそのような人間の一人でしたが、留学生活は予想もしなかった経験の連続でした(例えば、ルームメイトと電気料金をどういう割合で折半するかというような些細なところから困ったりもしました)。どんなに準備をしたところで不具合はあると思います。その不具合を何とかしようという過程の中で身についていくことのほうがむしろ多いのです。

機会に恵まれて貴重な留学経験をさせて頂きましたが、これが将来にどのように役立つか考えてみました。実は、今すぐに役に立つかどうかと問われると自信を持って「はい」と答えることは難しいかもしれません。いまはまだ大変だったという記憶しかありません。大満足かと問われても「はい」とは答えられません。いま思えばああしておけば良かったということもたくさんあります。それでもなお、この留学は有意義でした。楽しいこともつらいことも全てひっくるめて自分の糧となりました。さらに、たくさんの友達が出来ました。東南アジアをはじめ、アメリカのコロンビアの友人やスイスの友人も出来ました。彼らと食事をしたり、バーに出かけてみたり、皆で握り寿司を作ってみたり、そんな経験の一つひとつがかけがえのない思い出です。

いろいろとやることもある大学院の貴重な時間を使っての留学は「賭け」と呼べなくもないですが、この「賭け」が無ければ得られなかったであろうことが本当にたくさんあります。全力で勉強にコミュニケーションに打ち込む覚悟をもって、必死で駆け抜ける時間が学生生活の中にあるというのはきっと素敵なことでしょう。留学してみたいという気持ちがあれば、とにかくトライしてみてはどうでしょう?

最後になりましたが、この留学を支えてくださった全ての方々に感謝の気持ちで一杯です。この経験を糧にして社会に羽ばたきたいと思います。本当に有難うございました。

留学生だより

2007年4月掲載

2007年2月掲載

2006年12月掲載