在学生用掲示板

2011-05-09

【授業】月曜3限「行政法の現代的諸問題」の履修者へ

宇賀克也先生からの連絡事項です。

5月9日の授業で、山崎課長から、平成9年の河川法改正で、河川整備計画の原案に対し、公聴会の開催等による住民の意見反映の機会が法定されたことが、 公物管理への住民の意見聴取の機会を法定する仕組みの嚆矢であるというお話がありました。学説においては、アメリカ法の公共信託論影響の下、 河川、海浜等の自然公物は国民共有の財産であって、その行政主体による管理は、国民からの信託に基づいて行われるから、自然公物の管理において、 国民の意見の聴取とその施策への反映は、当然に必要であるとする見解も有力です。 公共信託論については、行政法概説Ⅲ(第2版)430頁を読んでおいてください。
防災の行政組織についても、以下、説明を補足しておきます。
レジュメの65頁に出てくる中央防災会議は、内閣府に置かれる「重要政策に関する会議」の1つです。内閣府に置かれる「重要政策に関する会議」には、他に、 済財政諮問会議、総合科学技術会議、男女共同参画会議があります。一般の審議会等と異なり、内閣総理大臣または内閣官房長官をその長として、 政治主導で政策決定を行う点に特色があります。経済財政諮問会議が、小泉政権の下で、「骨太の方針」を決定し、 小泉改革の推進の原動力になったことはご存じのことと思います。もっとも、経済財政諮問会議は、民主党政権の下では、事実上、活動を停止しています。 「重要政策に関する会議」については、行政法概説Ⅲ(第2版)146~148頁を読んでおいてください。 レジュメ65頁の2に書かれている非常災害対策本部、緊急災害対策本部、70頁中央の一番下の緑の箇所に書かれている原子力災害対策本部は、 内閣府に置かれる「特別の機関」です。「特別の機関」とは、所掌事務または組織構成が特殊であるため、 府、省、委員会の内部部局、審議会等、施設等機関、地方支分部局(地方出先機関)のいずれにも含まれない行政機関の総称です。 恒常的に置かれている特別の機関(行政法概説Ⅲ(第2版)213~215頁参照)も少なくありませんが、 非常災害対策本部、緊急災害対策本部、原子力災害対策本部は、臨時に内閣府に設置される「特別の機関」になります。
夏の節電対策のため、7月に行われる予定であった授業を5月、6月の土曜日に振り替えで実施することになっています。 「行政法の現代的諸問題」の振り替え授業は、今週の土曜日の5月14日に行われますので、忘れないようにしてください。 5月14日の授業では、国土交通省都市・地域整備局公園緑地・景観課景観・歴史文化環境整備室長の岸毅明氏にお出で頂き、 都市公園法、都市緑地法、景観法等について、お話いただく予定です。都市公園という公物管理についてもお話いただくため、 行政法概説Ⅲ(第2版)第3編の公物法の箇所を読んで、公物法に関する基本的知識を身につけておいてください。
5月16日は、独立行政法人統計センター理事の北田祐幸氏にお出でいただき、「行政のための統計」から「社会の情報基盤としての統計」に変革するため、 60年ぶりに旧統計法を全部改正して新統計法が成立した経緯、意義等についてお話いただきます。北田氏は、この新統計法の制定過程に携われた方です。 新統計法では、統計行政の司令塔として、内閣府に統計委員会が設けられました。 戦後、占領期に行政委員会として設けられていた統計委員会(占領期における行政委員会について行政法概説Ⅲ(第2版)173~174頁参照)とは異なり、 内閣府に置かれる審議会等(行政法概説Ⅲ(第2版)192~213頁参照)として位置づけられています。 また、総務省に置かれる政策統括官(統計基準担当)(行政法概説Ⅲ(第2版)136頁、169頁の局長級分掌職の箇所を参照)は、 統計に関する政府横断的な調整を行っており、やはり、統計行政の司令塔としての機能を果たしています。 さらに、内閣府に置かれる施設等機関(行政法概説Ⅲ(第2版)213頁参照)である経済社会総合研究所が国民経済計算を、 財務省に置かれる施設等機関である財務総合政策研究所が法人企業統計調査を、 総務省の内部部局(行政法概説Ⅲ(第2版)166頁参照)である統計局が国勢調査を行うほか、経済産業省等の他省の内部部局、 地方支分部局(地方出先機関)(行政法概説Ⅲ(第2版)216頁参照)、地方公共団体も統計調査を行っています。 時間のある方は、ジュリスト1381号の「新統計法政の現状と課題」に目 を通しておくとよいでしょう。

宇賀克也

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