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東京大学公共政策大学院 | GraSPP / Graduate School of Public Policy | The university of Tokyo

畑佐 憲 畑佐 憲

GraSPPに進んだことがきっかけで教職を志した

畑佐 憲
9期生(2015年3月修了)
公共管理コース

実は、高校3年生の時、英語の先生の人間的な魅力に惹かれて、その時すでに教職を目指すことを本気で考えていた。けれども当時の私には覚悟がなかった。公立中学校在学中、多様な背景・事情を持った生徒を相手に、先生たちが日々奮闘している様子を見て、自分には到底この仕事はできないと思ったのだ。「自分と違った価値観や背景を持った生徒たちに、公平に接することができるのか……。」この点についての不安はぬぐえず、ずっと自信が持てなかった。だから大学では結局、教職課程を履修せずに終わった。

大学の履修に制約のない自由なカリキュラムの下、幅広い領域の学問を学ぶうちに、3年次後半から政治学に興味を持ち始め、同時に公共性の高い仕事に将来は就きたいと思うようになった。そこで政治学について専門性を深めつつ、公務員も目指そうと思ってGraSPPに進学した。

私にとって転機となったGraSPPの授業は、「事例研究(都市地域政策と社会資本ファイナンス)」である。この授業は金本良嗣先生に加えて、国土交通省と三井不動産株式会社から派遣された実務家の先生方(当時は栗田卓也先生、日原勝也先生、内藤伸浩先生、林泰三先生、辻田昌弘先生)が担当されていた。この授業の最大の魅力は、何といっても先生方のネットワークの広さとフットワークの軽さ! 毎回の授業ではまちづくりの最前線で活躍されている実務家の方と議論する機会があり、時には外部の施設の見学とヒアリングも企画していただいた。とにかく先生方は学生に「現場」と「人」を見せようと、先生方の持てるリソースを惜しみなく授業に生かしてくれた。

事例研究を通して出会った先生や実務家の方々の仕事や社会に対する使命感を直に聴いて、GraSPPの学生として、自分が「今」できることは何かを考えるようになったのは、ちょうど1年目を終えようとしていた頃のこと。結果として1年間休学し、地域活動に従事して「自分探し」をすることにした。

*休学中に受けたGraSPPニュースレターの学生インタビュー
http://www.pp.u-tokyo.ac.jp/graspp-old/newsletter/2014/d/newsletter20140203.pdf

大学院を休学してからは、まず地元の荒川区役所の学習支援事業に有償ボランティアというかたちで参加した。この事業のコーディネーターの大村みさ子さん(「地域のアクティブおばさん」)との出会いをきっかけに、学習支援に限らず、もっと幅広いかたちで子どもたちを地域で支えるプラットフォーム(子どもの居場所)づくりに企画から携わることになる。

地域福祉の推進役である荒川区社会福祉協議会の全面的なバックアップを受けながら、何かのニーズを持った人に対して、地域住民として自分はどのような貢献ができるのか、もし貢献ができなければ誰に繋げばいいのか……、そんなことを考えながら、荒川区内を奔走した。このように動く中には、事例研究で先生方が伝えようとしていた「現場」と「人」が何かを実感する機会も多くあったし、いかに自分が世間知らずだったかを実感させられる機会もたくさんあった。

実際にこの取組みは後々、荒川区の公的補助事業(荒川区子どもの居場所づくり事業・荒川区が自治体として第3回プラチナ大賞審査委員特別賞受賞)にもなった。そして、地域社会で子どもを包括的に支援するための地域住民と行政、専門機関が連携するネットワークを形成するにも至った。

*子どもの居場所づくりの活動に関する新聞記事
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/60320
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201801/CK2018012902000104.html

*ネットワークに関する新聞記事
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201711/CK2017112302000112.html

GraSPPでの事例研究をきっかけに、一市民として公共政策の形成に実際に関わってみるという経験は、私にとってかけがえのないものとなった。そして復学。復学後は引き続き上記の活動に携わりながら、より具体的な問題意識を持ってGraSPPでの学びに取り組むことができた。その一方で、多様な価値観や背景を持った多くの子どもと接してみて、人の成長に関わることに大きなやりがいを感じるようにもなったし、いつしか、冒頭で述べたような「自分と違った価値観や背景を持った生徒たちに公平に接することができるのか」という不安もなくなった。

大学院修了後は民間企業に就職した。その一方で、上記の活動には引き続き休日や平日夜間に精力的に関わっていた。そうするうちに、改めて自分の適性について思いを巡らすようになり、教職を自分の職業にしたいという思いが芽生えてきた。しかしながら私は大学で教職課程を履修しなかったために、教員免許を得るためには所定の単位を取得する他にも教育実習等に行かなければならず、仕事との両立は厳しかった。最終的に退職を決意したものの、収入の見通しはゼロ……。あれこれ思案しているうちに、荒川区社会福祉協議会から、しばらくうちで働かないかと声をかけていただいた。そのおかげで、お金の心配をすることなく(しかも上司と同僚の理解と協力があって、有給休暇で教育実習等にも行けることに!)、ソーシャルワークの実務に従事しながら教員免許の取得と教員採用試験に取り組むことができた。そして平成30年度から晴れて教職に就くことができた。

GraSPPに進んだことがきっかけで、自分自身がどのような形で社会に関われるのか、それを見つけることができたと、強く感じている。持てるリソースを惜しみなく授業に生かし、その後押しをしてくれたGraSPPの先生方には感謝の気持ちでいっぱいである。

学位記授与式

学位記授与式(2015年3月 於 東京大学本郷キャンパス)

 

2015年3月 於 東京大学本郷キャンパス学習支援活動での1コマ

 学習支援活動での1コマ

2016年6月 子どもの居場所づくりの活動での1コマ

子どもの居場所づくりの活動での1コマ。他の若手スタッフと一緒に中高生と談笑する様子

ボランティア全国フォーラム2016で荒川区の子どもの居場所づくりの活動に 関する事例報告と若者の市民活動への参加について講演を行う 2016年11月 於 国立オリンピック記念青少年総合センター

ボランティア全国フォーラム2016で、荒川区の子どもの居場所づくりの活動に関する事例報告と若者の市民活動への参加について講演を行う(2016年11月 於 国立オリンピック記念青少年総合センター)

 

 

荒川区内で児童福祉の活動に従事する地域住民や行政の担当者、専門機関の職員の連絡会議(あらかわ子ども応援ネットワークの会議)の様子(2017年7月 於 荒川区立生涯学習センター)

 

 

大学院生時代の「自分探しの旅」、そして教職に就くまで全面的にバックアップをしてくれた 大恩人でもある荒川区社会福祉協議会の上司と同僚たちに見送られて

大学院生時代の「自分探しの旅」、そして教職に就くまで全面的にバックアップをしてくれた、
大恩人でもある荒川区社会福祉協議会の上司と同僚たちに見送られて(2018年3月)