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東京大学公共政策大学院 | GraSPP / Graduate School of Public Policy | The university of Tokyo

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政策課題に取り組むときに必要なのは「バランス感覚」と「柔軟性」

守屋貴之 特任教授 (from Japan) 特任教授

金融庁に2004年に入庁し、金融機関の監督や検査、金融制度の企画立案を経験してきました。改正に携わった法律には、例えば、銀行法や仮想通貨から暗号資産への名称変更などを行った法律、最近では資金移動業の規制の見直しに関わる法律などがあります。

私が2023年10月から担当する「資本市場と公共政策」という授業は、「みずほ証券寄付講座」の一部です。これまでも金融庁の関係者が関わってきた経緯はありますが、誰もができる経験ではないので、今回こうした機会をいただいたことを非常に光栄に思っています。
「資本市場と公共政策」では、実際の政策課題を取り扱い、今年度の授業では「貯蓄から投資へ」というテーマに焦点を当てます。

投資を促すには、教育による金融リテラシーの向上が必要とよく言われます。リテラシーを高めることももちろん重要ですが、現実にはそれだけで投資が増えるとは限りません。投資につながるかどうかには、ほかにも「金融商品の販売者が顧客目線に立っているか」「マーケットが魅力的か」といった、さまざまな要素が関わってきます。
授業では、なるべく多くの視点から課題について考えられるように、官民さまざまな立場の方々をゲスト講師としてお招きし、それぞれの方が行っている取り組みや課題感などについてリレー形式で講義をしてもらうことを考えています。

私はもう一つ「金融資本市場論」という別の授業も担当します。この授業では、学生さんたちに、金融に関わるテーマの事例研究を行ってもらいます。
例えば、最近よく使われている「◯◯pay」が、給与支払いにも使用できようになるという話が、少し前にニュースで話題になりましたよね。「どうしてそういう仕組みが作られたのか」「実現にはどういった課題があるのか」など、その担当者の立場になって深く考えてもらうことが目的です。普段何気なく使っているサービスも、設計側の視点に立つと、新たな気づきが得られるかと思います。
この事例研究では、私からいくつかテーマ候補を提案する予定ですが、学生自身のなかで他に興味のあるテーマがあれば、それに取り組んでもらっても構いません。自身が研究してみたいと強く思うテーマに取り組むことで、政策の「手触り感」を体験してもらえたらと思っています。

金融分野に限らず、どのような政策課題でも、誰から見ても100点満点の絶対的な正解は存在しないと思っています。これまで多くの課題に直面してきましたが、どの政策にも良い面もあれば、批判を受けてしまう面もあります。ただ、そのなかでも、政策現場では、最終的には今より良い方向へ向かうためにひとつの結論を出して実行していくことが求められます。
そうしたなかで、学生のみなさんには、授業を通して「バランス感覚」と「柔軟性」を身につけてもらいたいと思っています。さまざまな意見や情報をバランスよく集めながら、そのなかで自分の考え方をより良いものへ柔軟に変化させ、最終的に自分なりの結論を出す。こうしたスキルは、公共政策に限らずどんな仕事でも役立つのではないかと思います。

私は講師として授業を行いますが、私の考え方だけが正しいわけではなく、むしろこれまでの経験によって私自身の視野が狭くなっている部分もあるかもしれません。
授業を通じて学生のみなさんから新たな気づきが得られることを、今からすごく楽しみにしています。

 

【略歴】
2004年金融庁入庁。
検査局総務課、厚生労働省年金局企業年金国民年金基金課基金数理室、総務企画局企画課信用制度参事官室、関東財務局理財部金融監督第一課、監督局総務課協同組織金融室、総務企画局総務課管理室・政策課、財務省主計局(厚生労働係・経済産業係)、企画市場局市場課などを経て、2019年金融庁企画市場局総務課横断法制室長。
2020年に金融庁企画市場局総務課決済・金融サービス仲介法制室長。
2021年に金融庁総合政策局総務課総括管理官。
2022年に金融庁総合政策局総務課総括企画官 兼 広報室長。
2023年、東京大学公共政策大学院特任教授。担当授業は「資本市場と公共政策」と「金融資本市場論」