download graspp user website pdf tell external home arrow_down arrow_left arrow_right arrow_up language mail map search tag train downloads

東京大学公共政策大学院 | GraSPP / Graduate School of Public Policy | The university of Tokyo

GraSPPers Voice GraSPPers Voice

授業を通じて作る様々なネットワークは生涯に渡る貴重な財産

岩本康志 教授 (from Japan) Professor

私の専門である財政学は研究対象が非常に幅広い学問なのですが、今はその中でも社会保障分野を中心に研究をしています。というのも、高齢化が進む先進諸国において、予算編成における社会保障費の比重が高まって、重要な問題になっているからです。「増大する社会保障費のために財源が必要だが、簡単に増税するわけにもいかない」ーそんな状況で財源をどのように確保し、また何に使っていくべきかという戦略を考えていくことに、研究の意義があります。

カリキュラムでは「公共政策の経済評価」という授業と事例研究を担当しており、前者の授業では「費用便益分析」というツールを使いこなせるようになることがテーマとなります。この授業は講義だけではなく、外部スピーカーによる実務事例の紹介、さらにグループワーク形式での実践という3部構成を通じて、費用便益分析の使い方を学んでもらいます。

「費用便益分析」では、政策の効果と費用を貨幣価値にして評価します。経営戦略であれば「いくら使ってどのくらい儲かったか?」という考え方で定量的な評価が可能ですが、国の政策となるとそう簡単にいきません。政策は、直接的な「売上げ」をもたらさないからです。すると定性的な政策評価になりがちですが、費用便益分析では公共サービスの利用者が享受した便益がどれぐらいの金額に相当するかという観点から評価を追求していきます。とはいえ、知識もない状態から、説得力を持った評価をしてレポートを作成するのは非常に大変です。

約3カ月という短い授業のなかで「最後の発表までたどり着けるのか」と実はいつも内心ハラハラしています(笑)。ただ、皆さん非常に熱心に取り組んでいることもあり、どのプロジェクトも無事まとまって、レポートは公共政策大学院のサイトに掲載されています。あるプロジェクトでは、防潮堤の整備と高台移転を同時に行った政策に対して費用便益分析を行い、便益よりも費用のほうが上回っていた事実を明らかにしました。当時話題になっていた事業でもあり、発表したレポートがNHKスペシャルにも取り上げられるなど、大きな反響がありました。

費用便益分析や事例研究で身につけた能力は、政府機関での政策の企画立案だけでなく、民間企業での職務にも大いに役立てることができます。GraSPPというと、公務員を養成するための場というイメージを持たれるかもしれませんが、民間企業で活躍している修了生も沢山います。また、GraSPPのもう一つの魅力に、キャンパス生活の中で様々なネットワークを作ることができる点があります。「GraSPPマフィア」などと呼ばれたりもしていますね。在学生同士はもちろん、修了生や外部の実務家の人との繋がりは、生涯に渡る貴重な財産となります。多くの出会いと共に、GraSPPから大きく活躍して頂ければと思います。

2023年度Best Teacher Awardを受賞