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東京大学公共政策大学院 | GraSPP / Graduate School of Public Policy | The university of Tokyo

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可能性の芸術に挑む

斎木尚子教授 (from Japan)

外交、国際法、国際経済関係論、国際組織論を専門としています。外交とは、関係国(者)との間で、問題解決を可能にする一致点を見出すべく、厳しい交渉を戦略的にかつ粘り強く行うという意味において、可能性を追求する芸術であると言って良いかもしれません。授業では、対外政策の決定過程、政策そのもの及びその政策の履行の三段階に切り込み、日本外交の実相を検討します。

私の専門は外交、国際法、国際経済関係論、国際組織論です。学生時代から外交に強い関心があり、研究者の道に進むことを考えていましたが、同時に現場の最前線である外務省の仕事にも興味があり、外交官試験を受け、1982年に外務省に入省しました。外務省においては、幸運にも経済と国際法という元々関心のあった分野でキャリアを積むことができ、経済局長や国際法局長を務めました。

 授業では、実務者としての経験を踏まえ、実際に外交政策がどのように企画立案実施され、これをいかなる観点から評価するかを教えています。日本を主軸とする外交政策の事例研究ですが、外交は常に他のアクターとの相互作用です。日本政府のカウンターパートである外国政府のみならず、国際機関、多国籍企業、市民社会、国際社会全般にも検討を加えることが欠かせません。

 ともすれば外交は、結果だけを見て、善し悪しが論じられがちです。結果はもちろん重要であり、政府として結果に対する責任を有することは言うまでもありませんが、外交を理解し、より良いものにしていくためには、政策の企画立案決定に至るまでのプロセス、その際の種々の要因、時間的枠組み等を分析することが極めて重要です。いかなる情報に基づき、いかなる目標設定の下で、いかなる制約要因を克服して(または克服できず)、一つひとつの政策が形成されるに至ったかを解明した上でこそ、実り多い議論が実現します。

 更に、政策は、いつ誰が実施しても同じ結果が出せるというものではありません。外交の現場においては一人ひとりの取組により、結果が大きく変わることもしばしばあります。上述の政策としての外交に加えて、外交とは、国益をかけて、交渉等の平和的手段により、相手国と時に対決し時に協力する技術、と定義することもできますが、個々人の技量及びチームワークの力がまさに問われるところです。

 これ以上は譲れない、と関係国(者)が対立するとき、問題解決を可能にする一致点は果たして見出せるのか。ぎりぎりの交渉の中で、その可能性を追求するのが外交であると言えるかもしれません。最前線で日本政府を代表しているときも、未来を担う人材を育成している今も、この可能性の芸術に関わっている実感が、やりがいや喜びに繋がっています。

 今後社会に出て活躍する学生の皆さんにも、GraSPPの授業を通して複眼的な思考力と健全な判断力を養い、生涯取り組むテーマに向かって研鑽を積んでほしいと願っています。

 GraSPPは、理論と実践、実務と研究がバランスを取りつつ融合した、革新的かつ学際的な学びの宝庫とも言え、相互の高め合いが実現している場所です。自ら学ぼうとする意志があれば、ここから得られる価値は何倍にもなるでしょう。世界に羽ばたくステップとして大いに活用し、また、学ぶことを楽しんでください。