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東京大学公共政策大学院 | GraSPP / Graduate School of Public Policy | The university of Tokyo

院長メッセージ Dean's Message

2020年4月

 私たちは国内外で様々な構造的課題に直面しています。国際的には、技術を巡る地政学的なリスクの顕在化やポピュリズムの台頭による社会・地域の分断、そして地球温暖化の進行や感染症などのパンデミック流行への懸念は、数ある構造的課題の一部に過ぎません。国内に目を向ければ、少子高齢化に伴う地域経済の衰退や社会資本ストックの老朽化への対策も急務でしょう。こうした課題の解決に、人工知能や機械学習、ビックデータの社会的活用も有効ですが、こうした技術革新が与える経済・社会的な負の影響も懸念されています。今まさに世界が戦っている新型コロナウィルスの感染拡大は、社会経済活動の深刻な落ち込みを招いていますが、他方で情報通信技術を通じた新たなつながりも生み出し始めています。

国内外の構造的な問題とグローバル化が同時進行で進む中で、規制緩和や市場競争のみを理想形とした社会・経済制度のあり方だけでは、わが国や世界が直面している課題に対して対応しがたい事態が頻発しています。私たちは、政策・制度のグランドデザインを改めて考えなおす時代に今まさに突入しようとしているのです。こうした中で、公共政策が果たす役割もきわめて大きくなっていると共に、公共政策大学院で学ぶ意義も高まっています。

2004年4月に設立された公共政策大学院は、15年の実績の上に立って、さらなる研究教育機能の強化を試みています。

第1に、国際化に対する取り組みを強化しています。現在、コロンビア大学国際公共政策大学院(SIPA)、シンガポール国立大学リー・クァンユー公共政策大学院(LKY-NUS)、パリ政治学院(シアンスポ)、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)など海外の主要な公共政策大学院8校との間でダブル・ディグリーをおこなっています。また、カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)やロサンゼルス校(UCLA)、フランスのアッシュウセ経営大学院(HEC)など、交換留学をすることが出来る協定校は14校あります。これらのプログラムを利用し、海外での学習機会を得て、かけがえのない経験を提供しています。

 さらに公共政策に関わる高等教育の国際化の一層の促進及び国際的な魅力の向上を図ることを目的として、英語による教育を行う国際プログラムを設置し、多様なバックグラウンドを持つ海外の人材も積極的に受け入れています。北京大学やソウル大学校とのダブル・ディグリーや交換留学によって東アジアの公共政策と国際関係を学ぶキャンパスアジア・プログラムを開始しています。現在、公共政策大学院生の半数近くが世界約30か国から集まった留学生です。将来各国のリーダーとなる学生と、いわば、同じ釜の飯を食べて暮らすことは、大きな人的財産になると考えています。

 第2に、外部資金の積極的な導入によって、実務と最先端の研究教育との交流を図っています。交通・観光、エネルギー、資本市場、海洋政策、医療政策、科学技術イノベーション政策等に関する寄付講座や共同研究を設置しています。大学の中だけではなく、広く現実の政策ネットワークと結びつくことによって、より高度かつ実践的な研究教育を展開しています。また、このような研究教育の一環として、科学技術イノベーション政策の科学プログラムの中核部局になるとともに、海洋学際教育プログラムにおいても重要な役割を担っています。

 第3に、2016年度から新たに博士後期課程を開始しました。政策の立案、評価、実施に必要な知識やスキルはますます高度化、複雑化しています。特に国際機関や国際交渉の場においては、博士号が必須の時代を迎えつつあります。本博士課程では、専門分野(法学、政治学、経済学)における高度な研究能力に加え、学際的能力と国際的実務能力を持つ高度な博士人材を養成することを目的とし、国際金融・開発及び国際安全保障に加えて、今年度から科学技術政策の分野において、日本ならびに世界の公共政策をリードする人材の輩出を目指します。博士課程レベルの学生交流の質をさらに向上させるために、キングスカレッジ・ロンドンやコペンハーゲン大学との交流も開始しました。

 以上のように、国際化、実務との交流や社会発信を含む社会連携という課題に取り組みつつ、専門知識に裏打ちされた高い志を持った人材を供給するという基本的な役割を、公共政策大学院は果たしていきたいと考えています。


東京大学公共政策大学院 院長
大橋 弘