download graspp user website pdf tell external home arrow_down arrow_left arrow_right arrow_up language mail map search tag train

東京大学公共政策大学院 | GraSPP / Graduate School of Public Policy | The university of Tokyo

院長メッセージ Dean's Message

2021年4月

新型コロナウィルス感染がわが国で深刻化してから1年以上が経過し、私たちの暮らしを取り巻く環境は一変してしまいました。度重なる緊急事態宣言と外出自粛の要請、そして三密(密閉・密集・密接)の回避など、これまで経済原則とされてきた集積・密度の経済性を否定する事態となり、感染拡大防止と社会経済活動の両立をいかに実現するかが大きな課題となっています。

激甚化・頻発化する自然災害は、温暖化対策の重要性を再認識させ、わが国を含めた世界が脱炭素化(カーボン・ニュートラル)に向けた取り組みを強化しています。他方で、デジタル化の進展は、働き方を含めて私たちの生活に大きな変化を促すのみならず、海外を含めた巨大IT企業に対する課税を含めた国際的規制の在り方を問い直しています。米国バイデン政権の誕生で、国際協調が息を吹き返しつつある一方で、国際的な人権・人道問題や国家間の技術覇権競争は、わが国に対して経済安全保障に対する新たな考え方を求めています。

社会的格差がコロナ禍によってさらに深刻化し、わが国だけでなく世界的にも社会が二極化する傾向を見せています。これまで是とされてきた市場競争が、民間企業の経済性・営利性に頼っていては、社会的に受容されないことも露呈し、資本主義のなかで、いかに新たな社会的なセーフティネット(包摂)を作り上げていくかも求められています。

こうした国内外の山積する課題とグローバル化が同時進行で進む中で、従来のような規制緩和や市場競争のみを理想形とした社会経済制度のあり方だけでは、わが国や世界が直面している課題に対して対応しがたい事態が頻発しています。わが国の政策・制度のグランドデザインを改めて考えなおす時代に今まさに突入しているといえるでしょう。市場経済が求める価値と社会が求める価値とのあいだに乖離が生じるなか、公共政策が果たす役割もきわめて大きくなっており、公共政策大学院で学ぶ意義はますます高まっているといえます。

東京大学公共政策大学院(Graduate School of Public Policy。通称、GraSPP)は、2004年4月に、わが国における政策の形成、実施、評価の専門家を養成する大学院修士課程(専門職学位課程)として創設されました。

それから15年以上がたち、GraSPPは国内におけるパブリックマインド(公共精神)を育み、社会に提供する教育研究機関としての確固たる位置づけを得るに至りました。

わが国を取り巻く国内外の情勢が大きく変わる中で、皆さんに求められる能力や資質も大きく変化しています。従来の法学・政治学の知識や経験に加えて、それらの学問分野を俯瞰して相対化する力、そして経済や科学技術の進展を柔軟に取り込む能力も必要とされています。

GraSPPでは、①人口減少や少子高齢化などわが国が他の海外諸国に先駆けて抱える課題から国際社会が立ち向かうべきグローバルな課題まで、実務の最前線の課題を吸い上げ、②その課題に対して、法学・政治学・経済学から工学・医学まで、諸学問の最先端の知見を結集して解決策を提示して政策を動かすとともに、③実務の最前線の課題をもとに、各学問分野の研究を深め、新たな学問分野の開拓につなげる拠点となることを目指しています。

またGraSPPは教育機関として、④国籍・職業経験・専門分野など、多様な背景を持った学生が、実務と理論の交錯、諸学問の交錯のなかで切磋琢磨することで、⑤各国政府・自治体・国際機関・NGO・シンクタンク・メディア等幅広い場所で、現実の政策課題に対して、諸学問の最先端の知見を結集してより良い政策を立案・提言し、交渉・リーダーシップ等のスキルを駆使して政策の実現につなげる政策実務家、および⑥実務の最前線の課題をもとに、各学問分野の研究を深め、新たな学問分野の開拓につなげることができる研究者を育てることを目標としています。

GraSPPでは、世界クラスの研究者や第一線の実務家教員による理論と実践のバランスをとりながら、法学・政治学・経済学をベースに、一つの学問分野では解決できないような課題に取り組めるよう、全体で約250の多様な内容をもつ授業科目を用意しています。また55か国以上からの留学生受け入れ実績があり、常時在籍する30か国前後の学生と一緒に学ぶような多様性をオンラインのもとでも確保するために、100以上の英語講義を用意しています。皆さんのニーズを取り入れながら、多様なキャリアパスをしっかり支えられるように努めています。

新型コロナウィルス感染症の収束は未だ見えていませんが、GraSPPでは最大限の感染対策を講じた上で対面講義を拡大しながらも、教育効果が高いオンライン講義は継続的に進めていくことで、皆さんの勉学・研究をしっかり支えていきます。これからのGraSPPは、社会人の実務経験を持つ学生を積極的に採用しながら、実務の第一線における課題に対して、最先端の知見を結集した解決策を提示するとともに、実務の課題をもとに新たな学問分野の開拓につなげるような拠点となることを目指していくことで、社会的な責任を果たしていきます。


東京大学公共政策大学院 院長
大橋 弘