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東京大学公共政策大学院 | GraSPP / Graduate School of Public Policy | The university of Tokyo

GraSPPers Voice

理想の力を実務に活かす

楡井誠教授 (from Japan) 教授

マクロ経済を専門とし、特に景気変動所得分布・資産分布を研究しています。一例として株価の振動パターンや所得分布・資産分布について、統計的な法則性解明する論文を発表しました。マクロ経済は決まった答えのない学問です。研究を通じて現状を解きほぐし、格差固定化を回避し、望ましい在り方を求めていかにバランスをとるかが経済学の課題のひとつと捉ています。 

私はマクロ経済を専門とし、特に景気変動と所得分布・資産分布を研究しています。一例を挙げると、株価の振動パターンの研究があります。日々変動する株価の分布を見ると、暴落・暴騰といった例外的な現象が一定の確率で起こる、裾分布が重いという特徴が見られるのですが、なぜそれが起こるのかを研究しました。株式市場には、すべての情報を持つ投資家というものはいませんので、自分の知らない情報は、株価の推移を指標として見ることで、推測することができます。価格が情報を仲介し、情報を増幅させるという仮説を立て、裾分布の重さについての統計的なパターンを説明した論文を発表しました。

また、所得分布・資産分布にも同様の考え方ができます。富裕層のトップ1%内にも格差が存在し、どこを切り取っても同様という入れ子構造になっていますが、株価の振動パターンと統計的には同じなのです。

富裕層にはなぜこうした格差が普遍的に見られるのか等、授業で紹介することもあります。ある程度までの格差は、情報化、国際化の進む中で生まれた新興富裕層の登場によるものなので一概に悪いとは言えませんが、格差が固定化される状態は望ましくありません。良くない格差はなくしつつ、いかにバランスをとるかが経済学の課題のひとつと捉え、教えています。 

私は高校生の頃から「研究者になって社会に役立つことをしたい」という想いを持っていました。宇沢弘文先生の著書を読んで経済学への興味が募り、また、好きな数学も活かせることもきっかけとなり、大学に進学して岩井克人先生のもとマクロ経済を本格的に学び始めました。この学問の最大の面白さは、決まった答えがないことです。移りゆく時代環境と限られた情報のなかで最善の策を探すとき、楽しさとやりがいを感じます。

GraSPPは東京大学の中でも多様性に富み、かつ公共政策という志のもと、高めあう雰囲気が感じられる、居心地の良いアカデミアです。また、学生、講師ともに実務経験者が多いことで、実務の現場と、抽象的な学びの場が自然に融合し、各人が目的意識をもって学ぶことができるでしょう。

パンデミック発生後、世界中で福祉などに代表される公共セクターの重要性が強く認識されてきました。大きな実行力を持つ公的機関、国際機関が有効な政策を実施していくことが求められますが、先人の構築したプロセスを学び、踏襲するだけでは、変化に対応することはできません。GraSPPでは過去の理解とともに新しい事態に適応し、新しい解決策を提案していく能力を伸ばし、またそうした人材を社会に送り出すことを使命としています。

同時に、世界におけるアジアの存在感も増す中、日本で公共政策を学ぶことの意義は大きいでしょう。様々なバックグラウンドを持つ学生との交流は将来の大きな資産となるでしょう。ぜひ、大きな志を持って参加してほしいと思います。