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東京大学公共政策大学院 | GraSPP / Graduate School of Public Policy | The university of Tokyo

GraSPPers Voice

「日中韓」という一つの軸

Keisuke Inada (from Japan)

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GraSPPを修了してから、まもなく3年が経とうとしている。私は今、外務省の若手外交官全員が経験する在外研修のため、中国・南京にて、中国語の研修に励んでいる。外務省本省での2年間の勤務時代は、右も左も分からない中、外交官としての基礎を身につけるべく、あらゆることにチャレンジする日々であったが、GraSPPで得た自らの軸は、ブレずに走り続けるための一つの拠り所であったように思う。

 

学部時代、ドイツで初めての留学を経験した。アジアから遠く離れた欧州では、アジア人同士の親和性、連帯感を強く感じ、中国人、韓国人を始めとするアジアの友人を多く得ることができた。しかし、個人の心象とは裏腹に、当時の日中、日韓関係は、尖閣諸島や慰安婦問題等を巡り、悪化の一途を辿っていた。日中、日韓間の溝はなぜ埋まらないのか、そうした問題意識は、次第に自ら外交官となって、直接国家間の問題に尽力したいという思いに変わっていった。他方、大学では部活動に明け暮れていたこともあり、自分の勉強不足を痛感していた。そんな時、偶然見つけたのが、GraSPP、そして日中韓三か国協力の下に展開されているCAMPUS Asiaプログラムだった。

 

GraSPPでは、大使経験者や現役外交官、官僚を含む生の行政を知る教授陣から、分野横断的に、国際法、経済学、国際関係等を学び、幅広い教養が求められる外交官としてのベースを築くことができた。また、CAMPUS Asiaプログラムでは、中国、韓国のトップスクールである北京大学、ソウル大学での留学を通じ、各国の視点から東アジアの国際・政策関係について理解を深められた。さらに、同プログラムに参加する中国、韓国の学生とともに、一つのコミュニティを形成し、ワークショップやフィールドトリップなど、密な交流をする中で、地域や世界の課題について幅広い議論を重ねることができた。印象に残っているのは、日中韓三か国の歴史の教科書を翻訳し、その内容を比較する共同研究を行ったことだ。最終的には、各国の歴史認識に対する考察を元に、歴史に起因する対立の解消法を提案しあった。互いに深い信頼関係があるからこそ、トライできた研究課題であったように思う。今なお交流が続くCAMPUS Asiaで得られた人脈は、私の人生の財産だと自信を持って言える。

 

こうした自身のバックグラウンド、関心分野を人事課に伝えていた私の最初の配属先は、まさに日中韓協力を含むアジアのマルチ外交を担当する部署だった。その後、他課室への応援も含め、ASEAN、南シナ海、歴史問題、国際議員フォーラム、G20、平昌五輪等、様々な外交政策・行事を経験し、日中韓の分野においては、二度のサミットに関わることができた。東京で開催された第7回日中韓サミットでは、成果文書の交渉に携わり、案文の作成、交渉会合のアレンジや情報集めに奔走した。交渉がまとまった瞬間には、言い尽くせないような達成感を感じたことを覚えている。中国・成都で開催された第8回日中韓サミットでは、関連行事や首脳会議の後方支援に回り、総理一行の動きを影ながら支えた。CAMPUS Asiaを含む日中韓協力に対し、大きな政治的モメンタムを与えるサミットに二度も関われたことは、CAMPUS Asia OBとして嬉しく感じるとともに、そうした歴史的な場面に身を投じられることこそが、外交の醍醐味なのだと改めて思う。

 

まだまだ外交官としては未熟な部分ばかりではあるが、CAMPUS Asiaで培ったこの地域に対する理解と熱意は、常に自分を後押ししてくれた一つの個性であった。今後、どんな分野に挑戦するにせよ、「日中韓」は自分のキャリアの一つの軸であり続けるだろうと思う。そしてこれは、CAMPUS Asiaの他のAlumniを見る限り、決して珍しくないケースであるように感じる。自分のキャリアに人とは違うピースを求めるのであれば、ぜひCAMPUS Asiaの門を叩いてみてほしい。

 

G20大阪サミット(2019年6月)

南京大学、共に中国語を学ぶクラスメイト達と(2019年12月)

GraSPP修了式、CAMPUS Asiaの友人たちと(2017年3月)

 

第8回日中韓サミット(2019年12月)