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東京大学公共政策大学院 | GraSPP / Graduate School of Public Policy | The university of Tokyo

GraSPPers Voice

欧州での8か月―欧州と日本の架け橋になるための大きな一歩

仲間悠衣 (from Japan)

2022年4月に東京大学公共政策大学院(GraSPP) 国際公共政策コースに入学し、「宇宙政策」を研究しております仲間悠衣と申します。2022年8月~12月に交換留学プログラムにてSciencesPo(パリ政治学院)で学び、2023年1月~3月はGraSPPと欧州宇宙政策機関(ESPI)のMoUの下、ウィーンで宇宙政策シンクタンクの客員研究員として勤務しておりました。

憧れのSciencesPoでの出会い、学び

SciencesPo(パリ政治学院)は、1872年普仏戦争後に設立された歴史あるグランゼコールの一つ、エリート養成学校です。2023年のQS世界大学ランキング政治分野では、ハーバード、オックスフォード大学に続き第3位となりました。卒業生には各国首脳、国際機関トップ、企業経営者達が名を連ね、シラク元大統領、オランド元大統領、マクロン大統領の出身校としても有名です。学生の半数がフランス以外からの学生であり、国際色豊かなキャンパスライフを送ることが出来ます。

私のSciencesPoへの志望動機は、国際関係、並びに国際安全保障の分野で実践的な経験を積み、世界に広がるネットワークを築くことでした。東京大学では、宇宙政策を専門としており、宇宙デブリのルールメーキングに焦点を当て、宇宙の持続可能性を維持するための国際協力の方法を政治学と経済学の視点から考察しています。普段の研究活動では、日本の宇宙政策の特色上、宇宙産業を「平和利用」の観点から分析することが多いのですが、より多角的な視点で宇宙探査・利用を理解するために、留学先では国際安全保障コースの軍事系の講義を中心に受講しました。実際に、SciencesPoの特徴である少人数、実践的、ディべート多めのカリキュラムを通して、相手国への攻撃戦略、つまり危険を知ることで、より「平和」と「安全」への学びを深めることが出来ました。最も印象に残っているのは、元米陸軍大佐のPeter Herrly先生によるAmerican Military Power in the World Todayという講義です。私の専門分野である米宇宙軍の動向についてはもちろん、出身地である沖縄県の米軍基地問題について深く議論しました。世界で活躍していく上で重要なアイデンティティ、自らの使命に気付かされました。パリ生活において、日本寮で共に過ごした、海外で活躍する音楽家や異なる分野の研究者と夜遅くまで語り合ったのも忘れられない思い出です。様々な出会いや経験から、科学技術の活用と国際協力をキーワードに国際諸問題の解決に貢献する、という将来の目標への糧を得ました。

宇宙×政策 ~好きをキャリアに

パリ滞在中は、大学での講義に加え、様々な国際会議に積極的に参加しました。2022年9月に開催された国際宇宙会議(IAC)では、あらゆるニーズに応える世界最先端の超小型人工衛星を開発するArkEdge Space社の展示をサポートさせていただき、日本宇宙産業の世界での立ち位置や、技術視点からの宇宙政策の重要性に気付きました。現地では、指導教官である鈴木一人先生、Quentin Verspieren先生にもお越しいただきました。2022年11月には、パリ平和会議に出席し、マクロン大統領の講演を始め、様々な政策議論から、政府視点での宇宙政策課題を学びました。

IACパリにて 指導教官の鈴木先生(左)、Verspieren先生(右)と

更に、経済協力開発機構(OECD) Space Forumでは、日本からの初参加者としてVerspieren先生と取り組む東京大学チームのプロジェクトを代表して、パリ本部にて研究テーマを発表しました。宇宙空間は無限のロマンな世界だと言われることが多いですが、実際は利用される軌道領域は有限で、近年の宇宙開発活動の急速な発展により宇宙デブリは増加し、宇宙環境が悪化しています。OECDでは、宇宙環境の持続可能性について経済学の視点で研究しており、経済学部出身の私にとって、宇宙と経済学の掛け合わせはまさに求めていたもので、貴重な経験です。国際機関で働くことが幼い頃からの目標である私にとって、フォーラムの会議室での発表は夢の舞台であり、各国の代表団と議論を交わせたことは、私のキャリアにとって大きな一歩となりました。

OECD Space Forumにて

キャリアへの大きな一歩 ~宇宙政策リサーチャーとして

欧州宇宙政策機関(European Space Policy Institute, ESPI)は、欧州の宇宙政策を専門とするシンクタンクです。ESPIでの客員研究員生活を希望した動機は、様々な国の政策意図が集まる欧州宇宙産業のダイナミズムを学び、宇宙政策リサーチャーとして実践的な力を身に付けたかったからです。留学前に東京で開催された宇宙会議、Space TIDEに登壇されていた欧州宇宙機関(ESA)の方に留学中に宇宙政策業界でインターンをしたいと直談判をし、ESPI局長との面接を経て、唯一のアジア人として勤務させていただくことになりました。

ウィーンのオフィスで優秀な同僚、経験豊富な上司と過ごした3ヶ月はかけがえのないものでした。宇宙政策調査において、アカデミアとビジネスでの違いを実感し、自分にしか出来ない役割を見つけるために日々、挑戦の連続でした。まず、日本とは異なる文化、職場環境の中で、どのように自分の意志や能力をダイレクトに伝えるか、情熱を示すか、円滑に議論を進めるかを必死に模索しました。同時に、質の高い情報にどれだけ早くアクセスできるかのリサーチ力、的確な洞察力や分析力、読み手を惹きつける執筆力を全て英語で身に付けることに奮闘しました。併せて、常に広い視野を持ち、アンテナを張ることを意識し、一瞬のチャンスも逃さないように行動していました。その一つの成果として、上司が休憩中にした日本の基幹ロケットへの質問に応えたレポートを国際宇宙ニュースの記事に取り上げてもらいました。2023年3月にはESPIの一員として、国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)に参加させていただき、宇宙開発と国際政治の深い結びつきや政策提言の難しさを目の当たりにしました。また、国際舞台で日本の代表として認識されること、発言することの大きな責任とやりがいを感じました。

欧州で宇宙政策リサーチャーとして働いた経験から、将来ビジョンが明確になり、修士卒業後も海外を拠点に日本の宇宙産業の発展を世界に発信できるように、また将来世代の人々の生活を豊かに、そして多くの希望を残していけるよう世界の宇宙開発発展に政策策定者として貢献していきたいと考えるようになりました。

ESPI研究員達と

留学経験を通して得た知識や経験は計り知れず、これから大学院生活を送られる皆さんにも積極的に応募・挑戦することをオススメします。
最後に、指導教官である鈴木一人先生、Quentin Verspieren先生、留学手続きをご支援下さった青島めぐみさん始め公共政策学務チームの方々、SciencesPoの教授、ESPIチーム、充実したパリ・ウィーン生活を支えてくれた全ての皆さんに心より感謝を申し上げます。
これまでの人生で最も濃かった8ヶ月の経験を今後の研究生活・キャリアに最大限活かして参ります。