download graspp user website pdf tell external home arrow_down arrow_left arrow_right arrow_up language mail map search tag train downloads

東京大学公共政策大学院 | GraSPP / Graduate School of Public Policy | The university of Tokyo

GraSPPers Voice GraSPPers Voice

APEC VOF 2022 報告書

山口由美子

先進国とは何か?

私にとって初めてのタイへの訪問は、先進国とは何かを考える旅になりました。これまでずっと日本は先進国だと認識して生活してきました。しかし、日本は本当に先進国なのか、先進国の定義は何なのか、疑問を持つようになりました。
タイで日本との違いを感じたのは、日常生活でのデジタルを活用した便利なサービスです。例えば、病院では、電話で医師の診断を受け、インターネット経由でクレジットカード支払いをして、薬はデリバリーで受け取ることができます。タイの国民が1枚ずつ持っているIDカードには、ICチップが搭載され、イベントでの本人確認などに利用されています。日本でもすぐに導入したいような便利なサービスが普及しており、学ぶべき点が多いように感じました。
他方で、タイでの移動中に見た風景として、エアコンなしで窓を全開にして乗客が乗っているバス、荷台に人々が乗っているトラックがありました。タイではデジタル化が急速に進んでいる一方で、どこか牧歌的な日常生活の風景も残っていました。タイを訪問して、先進国とは何なのか、改めて考えるきっかけになりました。

タイのファンが一人増えた

今回のAPEC VOFのプログラムを通して、私はタイのファンになりました。短い滞在の中でも、タイの人々のおもてなしの心を随所で感じることができました。
プログラムの期間中に、各エコノミーの代表者1名が、タイの首相官邸を訪問する機会がありました。プラユット首相に私たちが作成した提言書を渡し、写真を3枚撮るというのが元々のスケジュールでしたが、予定外に首相自ら官邸の建物を案内してくださいました。プラユット首相は、私たち一人一人に英語で直接声をかけてくださり、フレンドリーなお人柄を感じました。さらに、今回のAPEC VOFを運営してくださったタイの事務局の皆様もホスピタリティにあふれていました。打ち合わせのために部屋を使いたいといった個別の要望にも対応していただき、移動中のバスでは、バンコク市内の様子やタイの文化を楽しく説明していただきました。
そして、ホテルのスタッフの方々も優しさにあふれていました。私が日本に帰る前日に会ったホテルの方は、「明日日本に帰るのですか?グッドラック!また泊まりに来てください」と声をかけてくださいました。プラユット首相、APEC VOF事務局の皆様、ホテルのスタッフの方々のおもてなしの心を感じて、私はタイのファンになりました。

若者の提言書

APEC VOFの醍醐味の一つは、参加メンバーの意見を反映した提言書を作成し、APECに参加する各国のリーダーに若者の声を届けることです。今年は「Open, Connect, Balance」のテーマの元に、各国の若者が実現したいAPEC地域の将来像を提言書にまとめました。特に印象に残っているのは、APEC地域での若者の自由移動を実現させようという提案です。すでにAPEC地域のビジネス関係者は、 APECビジネストラベルカードを取得することで、スムーズに行き来することができています。この仕組みを若者にも拡張し、勉強や仕事、インターンシップのために、ビザなしで渡航できる制度を作りたいという話になりました。すべての参加者がすぐに同意し、提言書にも盛り込まれました。
APECの場が、新しいアイディアを生み出す自由な議論の場であることを実感しました。限られた時間の中で、参加メンバーと役割分担をしながら提言書をまとめて行く過程で、メンバーとの一体感を感じられました。

APEC VOFのバトン

私は今回のAPEC VOFに参加をして、人生で一度しかできないような貴重な経験をすることができました。APECの各エコノミーについて、もっと知りたい、実際に訪問してみたいという気持ちが強くなりました。参加者と話をしていて驚いたことの一つは、日本人の漢字の名前には意味があることを知っていて、私の名前の意味を複数の人から質問されたことです。私自身、もっと各エコノミーの文化を学びたいと気持ちを新たにしました。
また、今回参加した私と堀さんの心の支えになってくれたのは、GraSPPの卒業生である平林さんの存在です。忙しい中一緒に参加してくださった平林さんから、APEC VOFの日本チームのバトンを受け取りました。来年に向けて、今回受け取ったバトンを次の世代の皆さんにお渡ししたいと思っています。さらに、いずれ日本がホスト国としてAPECを開催する年には、APECそしてAPEC VOFに主催者側として参加して、各エコノミーの関係者の皆様に恩返しができればと思います。