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東京大学公共政策大学院 | GraSPP / Graduate School of Public Policy | The university of Tokyo

学生レポート

学生レポート

社会を知り、人を知る

李 義真

Euijin_写真
ソウルは、居れば居るほど、その魅力に引きずり込まれるような場所でした。歴史の中で常に日本と中国に囲まれ生き延びてきた国の独特の性格が、社会全体、そしてその中で生きる人々の姿から今なお感じられるようでした。キャンパスアジア・プログラム(CAP)を通してのソウルでの滞在は、日本で生まれ育った韓国人である私にとっても、初めて韓国という国を深く観察し、理解できたとても貴重な時間でした。そんなソウルでの生活、韓国社会の中で個人的に感じた点を、少しだけ共有したいと思います。

 

まず、韓国社会では、日本に似た礼儀の中にも、時に人々の感情が激しく見受けられました。バスの運転手は、早く全員降ろして家に帰りたい様子が目に見てわかるように、大声で乗車・降車をせかすことがあります。コンビニの店員は、すごく笑顔で対応してくれることもあれば、私生活がうまくいっていないのか、あからさまにため息をついて面倒くさそうに対応してくれるときがあります。また、歩道の真ん中で立ち止まって何十分もケンカをするカップルを何度も見ました(笑)。でもその一方で、多くの人々は少し話をしただけでもすぐに心を開いてくれ、その後も気にかけてごはんをおごってくれたり、最後まで深い情を示してくれました。人間が本来持っている熱さ、温かさ、冷淡さ、様々な性格や感情が日常の中でより鮮明に映し出されている気がしました。最初の頃は少しストレスに感じることもありましたが、人々を観察し、また直接関わっていくうちに、不思議にもその様子が何か心地よく感じられるようになりました。 次に、韓国社会はすごく派手好きで、また忙しい社会でした。街中の看板やネオン、若者のファッション、お年寄りのカラフルな服(笑)まで、一目で日本との「色」の違いが感じられました。大都市ソウルといえども厳かな雰囲気はなく、とてもオープンで心が開かれました。その一方で、必要以上に時間をかけたり、長く待つことに対する強い苛立ちが社会全体から伝わりました。注文や行先を伝える際など、少し立ち止まってしまっただけでも、相手方や周囲の人々から「早くしろ」とのプレッシャーが感じられました。中高生は勉強で忙しく、大学生は厳しい就活事情の中で必死に生き、一方で大統領選挙などの行事ごとの際には街中が大騒ぎをするなど、色んな物事が忙しく行き来し、ついていけず頭の整理がつかないこともありました。

 

友人の一人はこれらの社会の特徴を、「規律のある混沌(カオス)」と言っていましたが、とてもしっくりくる表現でした。でも、すべてが何か人間臭く感じられ、辛くてボリューミーな韓国料理の助けもあり、社会の中で「生きている」という感覚がより強く感じられました。もちろん、社会が映し出す姿に対しては異なる見方があるし、どう感じるかも個人次第ですが、実際に現地で住んで人々と接してみると、学問が決して教えてくれない細かな魅力・問題点を感知できるようになり、バランスの良い思考力を育ててくれると感じます。そして、それは日中韓が今必要としている点でもあると思います。少し短い期間ではありましたが、CAPでの現地滞在の機会を通して、近くも遠いと言われる日韓の関係性が、私個人にとっては大きく近づいてきた気がします。